夜明けが希望でありますように (ページ48)

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犬飼side

「ボーダー推薦で大学行くと思ってたよ」

あの太刀川さんでも推薦を使えば進学できるのだから
雨宮の学力があれば落ちることはないだろう
それでもここで勉強しているということは
三門から出で他の場所へ行ってしまうのだろう

『私もそのつもりだったしその方が楽だと思ってる
　だからまだ悩んでる
　それに決めた時に学力が足りないって理由で
　受験出来ないのは悔しいから』

そう思うなら
六頴館の方が良かったのではないかと思ったけど
中学3年の時は俺も迷ったしそれと同じなのだと思った

「そっか、ならボーダーからは抜けちゃうのか」

『そうなるかもね』

「水上は良いの？」

『良くはない…でも、私家から出たいから』

また雨宮の顔に雲がかかって
その視線は参考書へと戻される

雨宮姉妹
この姉妹は何かあるのだと
そう言っているのと同じだった

それから度々ラウンジにいる雨宮に声をかけて
そのままの流れで途中まで一緒に帰った
それでも家まで送らなくていいとか
先に帰っていいとか
頑なに家のことを俺に知られたくない様子だった
だからあんなに遅くまで残っていることも
夕食を食べていないことも
何も知らなかった

あの日、カゲウラで王子が彼女に1歩踏み込んだ時
少しだけ焦った
必死に自分の声を殺す彼女に
事実を知ろうと煽る王子に
なんて声をかけていいか分からなかった
いつもならこんな修羅場など
簡単に回避できたはずなのに
王子の言葉が正しかったから
俺も知りたかった
ただ立ち入ってはいけないものがあるのだと
それも分かっていたから聞けなかった

そんな彼女を見てきたから今この状況が意外だった
自分と同じ想いを抱える妹がいても
どれたけ王子から嫌な言葉を投げられても
必死に耐えていた彼女が
自分か行動したことを悔やみ後悔して
涙を流している
俺からすれば彼女の行動が悪いとは思えないし
どちらかといえば良い方向に向くと思った
でも彼女にとってそれは違うのだろう
ただ想い続けるだけで良いと思っていた
幸せを心から願っていた
自分の未来を諦めたとしても

もういい加減
幸せになってよ

自分のために生きなよ