夜明けが希望でありますように (ページ45)

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ボーダー内でトリガーを起動して歩き
トリガーを解除して二宮隊の隊室に入った
たまたまなのか犬飼が連絡したのか
隊室には誰もいなかった
机の上に温かいココアを置かれタオルを渡され
「何があったの？」と目の前に座る犬飼は
真っ黒な笑顔をニコニコと浮かべ話しかけてきた

話したくないというより
話すために思い出す方が辛かった
温度を持たない手にぎゅっと力がこもった

『口が滑った』

多分犬飼ならそれだけで理解するんじゃないかと思った
少しだけ間を置いて犬飼は「そっか」と小さく呟いた
それ以上には踏み込まない犬飼の優しさが辛かった

『私、伝えるつもりなんてなかった
　クラスメイトっていう距離で良かったのに
　これから…どうすればいい？』

込み上げてくる想いが目の奥を熱くして
視界が歪んでいく

水上のことが好き
きっとそれは誰にも負けないくらい強い想い
ただそれだけで
彼女という立ち位置に自分がいなくても
水上が選んだ人と幸せならそれで良いと思っていた
だからこの想いはずっと隠していくつもりだった
でも人というのは欲深い
それは自分も同じで水上を前にして
今まで重ねた想いが溢れてしまった
本当は水上に知ってほしくて
誰か特別な人を作ってほしくなくて
もしそれを作りたいと思った時
自分だったら良いなって思ってしまったんだ

それにもう大事な人を失いたくないから
伝えて終わってしまう関係なら
このままで良いと思っていたのに

手のひらに落ちた雫はそのまま止まることがない
1度溢れてしまえば止まることを知らないようだった

「俺は…ちょっと安心してるよ
　いつまで自分に
　嘘をついて生きていくんだろうって思ってたから」

『……嘘なんて、私はただ…』

「分かってるよ
　水上に幸せになって欲しいだけなんでしょ
　でも本当はどうなの？
　水上に幸せになってもらうだけじゃなくて
　水上と一緒に幸せになりたかったんじゃないの
　自分の未来が諦められないんでしょ？」

今まで呼吸の仕方が分からなかった
自分の中で詰まったものがあって
それは日に日に苦しくなっていった

それが無くなったらって何度も思った