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『ノーマルトリガーの使用許可よく出たよね』
S級である私にノーマルトリガーは必要ない
それが上層部から返ってくる返事だと思っていた
「このノーマルトリガーを使うことで
良い未来になる可能性があるからな
それを言ったら鬼怒田さんが貸してくれたんだよ
それにそのノーマルトリガーを持っていても
S級のままだしランク戦に参加できるわけでもない
まぁそれも今後は結城次第だな」
『前に出水とトリガーのことで話したんだ
出水から見ても
私のサイドエフェクトは強いみたいだった
でも私は今のこの力が強いって思えなくて
林道支部長が言ってたように
もっと細かいところまで
見れるようにならないといけないって思ってる』
「そうだな」
そう笑って訓練室を出て行った迅さんに
少しだけ違和感があった
迅さんは誰かのすることを否定しないけど
それが目標達成できるのかを考えてる
そのために助言したり裏で手を回したり
出来る限りのことをする人だ
いつもより影のかかったようにみえた表情に
少し嫌な感じがした
訓練室を出て本部の無機質な廊下を歩きながら
頭の中をよぎるのはあの人ばかりだ
"見てよ、悠一。可愛いでしょ"
あの日
血に濡れたあの人の腕の中で警戒して俺を睨む姿は
簡単に人を殺してしまいそうで
初めてネイバーを前にした時のような感覚だった
月日が流れて少しずつ重なる面影が
このままで良いのだろうかと気持ちを揺らす
あのブラックトリガーもサイドエフェクトも
強力なものを使いこなそうとする彼女は悩んでいて
その悩みも苦しみも消えることなんてない
今の俺を見てあの人は何て言うだろうか
しっかりしろとも頑張ってるとも言わず
ただ頭を撫でるだけかもしれない
「どうすればいいかな…渚さん」
もう誰も応えてくれることのない言葉は
微かに廊下に響いた
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作者名:lei | 作成日時:2023年9月15日 23時