夜明けが希望でありますように (ページ39)

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同じ日本に住んでいるのに違う世界の人みたいだった
言葉遣いもそうだけど
ずっと三門市の中で過ごしてきた私にとって
関西というところは外国と同じような感覚だった
私より広い世界を知っている彼は
外の世界の話しを饒舌に話し
こっちの世界にいつの間にか馴染んでいた
クラス内に聞こえる関西弁が話す内容は
嘘なのか本当なのかは分からないけど
人を楽しませていた
そんな彼が同じクラスで同じボーダー
知らないというには無理があった
でも彼との接点なんて無くて話すことはなかった

高校に入学して3週間くらい経った頃
放課後に校内を歩いていると明るい髪色が
廊下の奥から見えてなんとなくそれが気になった
この廊下の奥にあるのは
将棋部の使っている教室しかなかったはずだ
ボーダー隊員は
部活に入れないという規則があるわけじゃない
でもボーダー隊員で任務も入る私達が
部活に行けるほどの時間はない
放課後のこの時間に何の用事があるのだろうかと思って
少しだけ後ろを歩いた

扉の前で立ち止まった彼は
扉にかけようとした手を止めた
光が反射した髪の毛は明るくて少し茶髪のように見えた
緩く綻ぶように目が細められて
周りを楽しませる彼の初めて見た
自分のための笑顔
すぐに戻ったその顔は細い目に無表情
クラスで見るのと同じだった
彼に気づかれる前にその場を去っても
あの表情だけは頭から離れなかった
それから同じ日直になっても話すことはできなかった
放課後の教室で頬杖をついて
シャーペンを走らせる水上君を見るまでは

『水上って呼んでも良い？』
きっと疑問を浮かべているのだろうなって
顔を見て分かった
でも彼との会話が楽しかったから
もう少し話せたら良いなってそう思った
そして彼の良いよって言葉が欲しかった
思っていたのとは違う回答をもらったけど
今はそれで良いかなと思った
結局その後あまり会話をすることはできずに
2年へと進級した
2年になってたまに見かける彼に目を引かれていたら
同じクラスになった村上に声をかけられることが増えた
3年になってまた同じクラスになれた
でも3年になれば私の妹も同じ学校に入学してきた

水上が誰と付き合うことになっても良かった
ボーダー隊員というだけで告白する子だっているし
水上は優しいから仲良くなれば告白する人だっていた
あの水上が選ぶくらいだ
そんな子に自分が敵うわけないって分かっていたから
でも妹まで水上を好きになるだなんて思わなかった