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爪を立てられた部分と指先の触れていた部分が
特に色が濃ゆくなっていて自分でもその変化に驚いた
少し押しただけでも痛くて
治るには1、2週間くらいかかるのかなとため息を吐いた
みんなに見えないよう振る舞えば
左手を指摘されるようなことはなかった
それなのに水上は気付くんだね
「…痛いん？」
水上は力をあまり入れず触った
あの男に触られた時はあんなに嫌だったのに
今はそんな感じがしなかった
『ううん、痛くない』
「いや、湿布貼るくらいなら痛いやろ」
『大したことじゃないから』
そう言えば水上の眉間に皺がよった
細められた目は睨んでいるわけではないのに鋭かった
「結城」
まただ
一言名前を呼ばれただけなのに心拍が上がる
勘違いしてはいけない
そう思うのにもしかしたらと期待してしまう
クラスでその名前を口に出すことはないのに
ここで言葉にするなんて水上は少し残酷な人
でもやっぱり優しい人
「痣になったんやないん？」
『なったよ、…なんで水上がそんな顔するの』
「なんのことや」と言って戻った顔は
いつも通り無表情だけど
自分が傷ついたような苛立っているような
そんな顔をしていた
水上はきっと自分を責めているんだろうな
この傷は水上のせいなんかではなく自分の責任なのに
王子の分かりきった挑発に乗って
知らない人に当たって反感を買って水上に助けられた
高校1年の時水上と日直になった
初めて会話をしたのはそれが初めてだった
でもそれよりも前に私は一方的に水上を知っていた
水上がいつボーダーに入ったのかは知らないけど
スカウト組は案外目立つことが多くて
関西弁を使う彼は少しだけボーダーで有名だった
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作者名：lei | 作成日時：2023年9月15日 23時
