夜明けが希望でありますように (ページ27)

今日:52 hit、昨日:16 hit、合計:13,810 hit

・ページ27

手櫛で簡単に整えれば濡れている髪は絡まりやすく
勢いにまかせて下にさげた指に引っ張られ
『…いったぁ』と小さく1人ごとのように呟いた
また延びてくる白くて長い指が次は髪の間を通った

「乱暴にしたらあかんやろ」

絡まっている部分を解き
「ちょっと借りるで」と机の上に置いた
折り畳み式の櫛を持って毛先だけをとかし
次は少し上から櫛を通して同じことを繰り返し
最後は根本あたりから優しく櫛を滑らせた

「あとは自分でやり」
そう言ってパチリと音を立てて
プラスチックの櫛を机に置いた
左の横髪だけが綺麗にされ
訳もわからず男子の輪の中に戻っていく水上を
目線で追えば「へぇ」と
興味深そうに笑う王子と目が合い睨みつけた
すぐに櫛を手に取って
さっき水上がした時以上に丁寧に櫛を通した

『さっきから気になってたけどなんでここにいるの？』

やっと落ち着きを取り戻し最初に思った疑問を投げた
全員同じ高校に通っているけどクラスはバラバラで
ここに集まる理由が分からなかった

「お前暇な日あるん？」

機嫌を良くしたのか後ろを振り向きながら
椅子の背に肘を置いて喋る水上の声は
どこか弾んでいるような感じがした

『暇な日は…まぁあるけど』
質問を質問で返されよく分からないまま答えた
「いつ？」と水上は自分のスマホを片手で持ち
スクロールしたりタップしたりしながら聞いてきた
同じような自分のスマホを開き
防衛任務や訓練の入っていない日を探した

『基本日曜が空いてるよ』

スマホを見ながら「日曜…」と水上は呟いた

「カゲウラに集まらないかって話してたんだ」

分からないと顔に出ていたのか
村上は簡単に説明してくれた
あぁなるほど
今は水上が全員のスケジュールに合わせて
行く日を決めているのだとやっと分かった
めんどくさいと言って
全員の予定を聞くことはなさそうだけど
このメンバーを見た時
それが適任なのが水上くらいしかいない

『このメンバーで行くの？』

「六頴館の方も誘ったから多分来ると思うよ」

スマホでメッセージを送っているのか
忙しなく指を動かす北添に
「まぁ全員は無理やろうな」と水上が言った