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「プールってS級は入るのかよ」
『頼まれただけで授業は私も免除だよ』
どこか羨ましそうにする当間に返せば
「ま、そうだよな」と視線を逸らした
ボーダー隊員はいつ招集がかかってもいいよう
水泳の授業には参加できない
その分夏休みに補講を受けなければならない
常にトリガーを持っていられる環境しか
私達の行動は許されていない
水泳があまり好きではない私からすれば
補講の方が楽で嬉しいのだけど
そうでない人もいるだろう
「プール掃除とか他の奴にやらせろよ」
少し不機嫌そうに見える影浦の言いたいことも
分からなくはない
自分達が使うわけではないのだから
使う人が掃除をすれば良い
私もそう思うところはあったが
それだと誰もプール掃除なんてしないだろう
誰かがやらなければならない
しかしその誰かが見つからないのだ
だからその誰かに私がなっただけの話しだ
『まぁ、そうなんだけどね』と影浦に返せば
次は舌打ちが返ってきた
男子の輪の中にも水上もいて
そのオレンジが動いて私の方へと振り返った
また何か言われるかもと思った時
いきなり水上は立ち上がり
男子の輪から少し外れた私のところまで歩いてきた
『え。何、』
いくら細身とはいえ178cmもある水上が目の前に立てば
150cmちょっとしかない私からは少し怖く感じる
1歩後ろに下がれば
延ばされた手が肩にかけてあるタオルを掴み
そのまま頭を捕まえられ
整えたばかりの髪を乱暴に拭かれた
頭をグラグラと揺らされ
目の前に落ちてくる髪が邪魔で目を瞑った
揺れが収まり目を開ければ
さっきよりも濡れたタオルがまた肩にかけられた
水上が髪を拭いてくれた
それを理解するのが遅れて固まる私に
意地悪く口角を上げて「ふはっ」と吹き出した
「髪ボッサボサやで？」
心臓がドクンと大きく音を立てた
『…み、ずかみのせいじゃん！』
今の私にはそう返すことがやっとで
水上はいまだに口元に片手を置いて笑っている
いつも気怠げな表情ばかりなのに
こんなにも笑顔を向けてくるなんて
期待しそうになってしまう
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作者名：lei | 作成日時：2023年9月15日 23時
