夜明けが希望でありますように (ページ12)

今日:37 hit、昨日:53 hit、合計:13,848 hit

・ページ12

自分の顔が今
どんな表情を浮かべているのかわからなかった
でも笑えてはいないだろう
笑えるほど自分に余裕がないことも
自信がないことも分かっているから

立ち去ろうと腰を上げた
水上と妹の関係に口を出す権利は私にはないのに
勝手な嫉妬という醜い感情を持っていると
知られなくなかった
これ以上水上の隣にいるのは良くない
そっと音を立てずに立ち上がった
水上とは反対の方向へ1歩足を踏み出した時
右手に伝わる熱に息が止まった感覚に陥った
それなのに嫌だとは思わず少し嬉しさすらあった

「どこ行くん？」

触れ合っている右手が熱くその熱を逃すように
抱えるバックをギュッと握りしめた
本当は全部話したい
妹のこと水上が好きなこと
今の自分が大嫌いなこと
でもこれ以上水上に嫌われたくない
その気持ちの方が強かった
みんなの求める私であれば
良い返事ができたのかもしれない
しかし水上を前にしてそんなことはできなくて
頭の良い彼ならそんなこと
気付いているのではないかとまで思っでしまった

『別に…どこでも良いでしよ』

「なら教室でもええの？」

やっぱりこの人は分かってる
妹に対する私の思いもクラスでの私にも
何も言うことができずに黙り込む私は
卑怯でただ逃げているだけ
好きなものを好きだと主張できる妹の方が
何倍も強くかっこいい

『…もど……ない』

こんなか細い声しか出せないなんて
自分が恥ずかしくなる

「せやったらここに居ればええやん」

やっぱり水上は優しいね
人に興味なさそうに見えて本当は誰より周りを見てる
人によって話し方を変えるとこも
危ないことは自分がやるということも
人にはなかなか気付かれないような
不器用な優しさを持ってる
今だって私の方を見ないように
反対側を向いてくれている
そして触れる手はいつでも振り解けるくらいの
力しか入っていなくて
私に選択させようとしている
目の奥が熱くなっていくのを感じ
きつく目を瞑って水上の隣に座り直した