32 ページ32
.
「こちらのお客様も入れ墨の囚人でございますよ！！
不敗の牛山様です！！！」
私達の方向に走ってくる家永が、
後ろに迫る牛山を指さしてそういった。
杉元の雰囲気が一瞬にして変わる。
殺意のスイッチが入ってしまった。
こうなっては私が取るべき行動はただ一つだ。
上がった口角が引き攣る。
『…あーもう！！アシリパは私に任せろ！！
杉元は目の前の敵に集中しろ！！』
「おう…！！」
杉元とチンポ先生が一触即発の雰囲気を纏う。
私は巻き込まれないようにキロランケを背負いながら
アシリパの元へと進んだ。
そして、右手でアシリパ。左手と全身でキロランケを
背負って出口を目指して歩き出した。
*
『…ふ…はぁ…っ』
腕の筋肉が痙攣してきた。
視界もぐらぐらと揺れている気がする。
つい先程まではうるさく鳴り響いていた
爆発音も今ではもやがかかったようにおぼろげだ。
意識がどこかに吸い取られていく感覚がする。
『とま…ちゃ…だめ…だ…』
足を前に進めようとした時、
不意に力が抜けて体ごと前に倒れ込む。
アシリパが頭を打ってしまう。
反射的にそう思い、両腕でアシリパの頭を包み込む。
そして訪れるであろう衝撃を身を固めて待ち構えた。
「ッ大丈夫かA！！」
『…っあ』
その時、杉元が現れて私の体を支える、
そして心配そうな目で私の顔を覗き込んだ。
その瞬間。杉元と出会った時の記憶が蘇る。
きっと、私はあの瞬間から杉元を好きだった。
「ん？あれ、なんでこんなとこに居るんだ？｣
キロランケを掴んでいた左腕を放したため、
彼は音を立てて地面に倒れ込んだ。
しかし、その衝撃でようやく目が覚めたようだった。
「説明はあとだ！！とにかく逃げねぇと！！」
「わ、わかった！！俺がアシリパを持つ！！｣
私は、もう指先にも力が入らず、
完全に杉元にもたれかかっている。
杉元は「ごめん」と一言謝罪をし
海辺の時と同じように私を抱き抱えた。
もはや抵抗する力も入らない私は、
目だけ動かして玄関口を見る。
『…はは』
玄関のすぐ横に、浴衣の花柄が見えなくなる程
誰かの血を被っている幼いAが
こちらをじっと睨みつけて指差していた。
日に日に鮮明になっていく幻影に乾いた笑みをこぼす。
今だけは、許してくれてもいいじゃないか。
私達が玄関扉を通り過ぎたその瞬間。
耳をつんざく爆音と共に爆風が迫り来る。
そして、一瞬でホテルが吹き飛んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 67人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
セミ⭐︎ - 月島ァン“！！ (4月27日 19時) (
レス) @page42 id: 6201ff5e9e (このIDを非表示/違反報告)
セミ⭐︎ - ゲンジロウちゃん可愛いですよねぇ、「上手く、踊れない、ブヒィッ！」が好きすぎてもう1日に最低一回は見ていますw (4月23日 17時) (レス) @page37 id: 1c9608ec9f (このIDを非表示/違反報告)
作者 - セミ⭐︎さん» 本当にお待たせしました…！今後は更新頑張りますね！！自分の推しキャラは谷垣と杉元と月島です。早く谷垣を踊らせたいです^^ (4月22日 16時) (レス) id: f336fb7281 (このIDを非表示/違反報告)
セミ⭐︎ - ぬおぉ！更新ありがとうございます！ずっと待ち侘びておりました！すぎもっちゃん、夢主ちゃん、､､､ぐへへへh、ン“ん、すいません尊すぎてつい、作者様の推しキャラはおりますか？自分は複数人いるのですが杉元、尾形、月島が好きでございます (4月22日 15時) (レス) @page36 id: d5e2d1caf3 (このIDを非表示/違反報告)
セミ⭐︎ - 作者様、大丈夫ですか？無礼は承知なのですが、続きが欲しいです。こんな気になるとことで終わられては、夜も寝れません！何かあるのでしたらご報告お願いします。更新できなくなってしまったなど、何かお願いします (4月12日 22時) (レス) id: d5e2d1caf3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：眠いです。 | 作成日時：2024年3月21日 0時
