- ページ42
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ゆらゆらと、揺れ続ける死体。
先程まで生きていたことを容易に表していた。
鬱が傍に座り込む。
甘い鉄の匂いだけが充満した部屋。
｢…Aちゃん、Aちゃん……僕を連れてってや｣
何度も傷を付ける。
暗い部屋。
赤が溜まる。
返事はない。
ただ、水が滴る音だけ。
鬱は涙と共に、少女に対する糾弾を吐露した。
｢嘘つき。僕を愛してくれる言うたのに｣
違う。
好きだなんて一言も言われていない。
｢嘘つき。ずっと傍におるって言うたのに｣
違う。
傍に居させるために、無理矢理世界の扉を開けた。
｢嘘つき。………絶対に死なない言うたのに｣
違う。
少女は死にたくて死んだ訳では無い。
｢……………なんで、殺してくれへんのや｣
一本。
｢なんで、僕は一緒に行けへんのや｣
二本。
｢なぁ、なんでや…、僕は人間じゃないんか…？｣
三本。
｢…なんで、一緒に死ねへんの？｣
｢…もう終わりや、大先生｣
｢………トントン、死んでもうた｣
｢見れば分かる。降ろすで｣
このままじゃ可哀想や、と。
｢なぁ、僕らは………人間になれへんの？｣
｢…俺に聞かれても分からへんわ｣
少女を降ろして抱き抱える。
鬱はそんなトントンを羨ましそうに、妬ましそうに見つめる。
その視線にトントンは気づいていた。
｢……せやなぁ。ずっと人間だった、トントンにはこの気持ちは分からへんよ｣
｢逆や。ずっと人間だったから、気持ちは分かるで｣
大丈夫や。
グルさんが何とかしてくれる。
そう呟いた。
鬱は膝を抱えた。
｢そんなん…分かってんねん…｣
Aちゃん、と。
｢…現世に行けば、誰にも邪魔されへんやろ｣
一緒に連れてってや。
二度目の哀訴。
世界は崩れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1000人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
秋扇(プロフ) - ．さん» そう言っていただけて本当に嬉しい限りです…、！ これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2021年2月1日 6時) (
レス) id: a73cd4cc12 (このIDを非表示/違反報告)
． - こんばんは。コメントを書くのがあまり得意では無いので簡潔に申し上げますが心から好きです… (2021年1月27日 23時) (レス) id: b56d4c311c (このIDを非表示/違反報告)
秋扇(プロフ) - レイさん» ありがとうございます、長らく空けてしまっていて申し訳ありません。今後ともお楽しみいただけたら幸いです…！ (2021年1月1日 1時) (レス) id: a73cd4cc12 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(咲海)(プロフ) - 嬉しいです!!ありがとうございます!! (2020年10月28日 0時) (レス) id: c05eda2bfa (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 更新頑張ってください応援してます！！！ (2020年10月27日 21時) (レス) id: 409dd9da63 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：秋扇 | 作者ホームページ：https://odaibako.net/u/sasamegoto0401
作成日時：2020年10月3日 22時
