- ページ35
｢…もうそろそろAちゃんに話す必要があると思うけど、俺は｣
｢そうだね。このままだとまた繰り返すだけだと思うよ｣
これはあくまで善意だ、と言い張るかのような2人。
そして、それを酷く冷たい目で見つめるトントンさん。
何となく察する。
私はそこまで察しの悪い人間ではないと自負はしていたから。
かと言ってすぐに信じられるようなものではなかった。
それは決して信じたいと思えるような内容ではなかった。
だけど、それは少しだけ喜色を纏った事実だった。
｢トントンさん…｣
｢………すまん｣
その目は伏せられた。
｢私の、幼馴染ですか…？｣
母から守ると約束をした幼馴染。
そして、私を置いていった、幼馴染。
記憶から名前も、顔も全て失ってしまった。
トントンさんは答えなかった。
否、答えられなかったのだろう。
しかし、何かを言おうと。
必死に言葉を探しているようでもあった。
軈て、徐に口を開く。
｢…初めから、生まれた時から選ばれとった。俺らは、世界に見放されたんや｣
剣を降ろし、小さく呟いた。
私だけじゃない。
トントンさんも、選ばれていたと言うことなのだろうか。
｢守れなくて、ごめん。……でも、ほんまにこの世界におった方がええんや。分かってくれ｣
頼む、と弱々しい声。
腕を伸ばす。
手を掴む。
そして、抱きしめた。
幾星霜と、求め続けてきた姿。
名前も分からない、私の幼馴染。
｢A…？｣
｢…、もう、皆の所に帰ろう…っ。一人にして、ごめんなさい、疑っててごめんなさい…｣
守ってくれていたのだ。
ずっと。
ずっと一人ここにいて。
私が間違っていた。
｢俺らを、選んでくれるん…？｣
｢……だって、もう現世にいる必要ないから｣
手を取って目を見る。
トントンさんは少しだけ安堵したかのように微笑んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1000人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
秋扇(プロフ) - ．さん» そう言っていただけて本当に嬉しい限りです…、！ これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2021年2月1日 6時) (
レス) id: a73cd4cc12 (このIDを非表示/違反報告)
． - こんばんは。コメントを書くのがあまり得意では無いので簡潔に申し上げますが心から好きです… (2021年1月27日 23時) (レス) id: b56d4c311c (このIDを非表示/違反報告)
秋扇(プロフ) - レイさん» ありがとうございます、長らく空けてしまっていて申し訳ありません。今後ともお楽しみいただけたら幸いです…！ (2021年1月1日 1時) (レス) id: a73cd4cc12 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(咲海)(プロフ) - 嬉しいです!!ありがとうございます!! (2020年10月28日 0時) (レス) id: c05eda2bfa (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 更新頑張ってください応援してます！！！ (2020年10月27日 21時) (レス) id: 409dd9da63 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：秋扇 | 作者ホームページ：https://odaibako.net/u/sasamegoto0401
作成日時：2020年10月3日 22時
