米:君色のキャンパス 7 ページ17
最後にクレヨンで人影を描いて、全体に変なところがないか確認する。
空のグラデーション。木漏れ日のキラキラ。葉っぱの緑具合、どこを見ても問題はない。
問題“は”ない。
隣に座るアルフレッドは、この絵とほぼ同じ格好で同じところにすわっているが、こいつと絵を比べると、やっぱりこいつの方がこの絵よりも夏っぽくて存在感があって、きれいだった。
「うん、できたかな」
ふう、とひとつ息を吐き、誰に言うでもなくただつぶやく。変な違和感を残しつつも、別に気に入らないところがあるわけではないので、ようやく完成だ。
「できたのかい？！みせてくれよ！」
「はい。やぶかないでね」
「ははっ、そんなヘマしないさ！」
いかにもビリビリにしそうな奴がなにを……と思ったが、さすがに大丈夫だろう。
「すごいね！普通の学生がこんなもの描けるなんて、エキサイティング！」
絵を膝の上に置いて、叫びのようなポーズで驚きを表現するアルフレッドは、相当普通の学生をバカにしているように思える。
「じゃあ、パレットと筆洗ってくるね」
顔だけこちらに向けてうなずく姿に苦笑いしつつ、絵の具セットを持って立ち上がり、後ろでワォ！とかイェス！とか叫んでいるムンクを目尻に水道を目指した。
ぱしゃぱしゃと、水の弾ける音。
爽やかなそれを聞くと、夏なんだと感じる。別に、冬でも同じ音は聞けるけど、夏だから……って、そんなふわふわとした理由で、ここまで違いがあるものなのだから不思議だ。
そして、せっかく完成した絵の違和感の理由も、ふわふわとしたものだった。
「『楽しくない』って……じゃあ、どうすればいいんだろ」
パレットにこびりついた絵の具を、筆で撫で洗いして落としてきれいな水を作ることを、わたしは楽しいと思って作業するが、あの絵の中の人影は、はたして何か楽しさを感じることができているのだろうかと気が付いた。
きっと、できないでいるのだと、わたしは思う。
「だって、ひとりだもんね」
常に友達と一緒にいないと不安になるわたしには、そんな実に自分勝手な理由しか思い浮かばなかった。
水道の蛇口が高い音を立ててしまるのを確認して、持ってきたものを全部抱え、歩く道に水をポタポタと足跡のように落としながら、あの小さな丘に戻った。
「完璧なんだぞ！」
そう彼が叫んだから、きっとわたしの存在に気付いていないか、気付いてるけど無視されているのだろう。
脅かしてやろうと、彼の後ろに回り込む。
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そら色ぱんだ(プロフ) - イチゴフラペチーノさん» コメントありがとうございます。その言葉を待っていました！後でフェリちゃん視点の話を書く予定ですのでそちらで分かると思います。でもヒントを出すとしたら、フェリちゃんのお願いは絶対叶いますよ。 (2017年8月5日 11時) (
レス) id: a29f2cd473 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴフラペチーノ - フェリちゃんが主人公のお話でフェリちゃんとルートが何をお願いしたのか気になります！ (2017年8月5日 0時) (レス) id: e3c16ab556 (このIDを非表示/違反報告)
そら色ぱんだ(プロフ) - 小夜さん» ありがとうございます！その一言でやる気が溢れてきます！ (2017年5月14日 12時) (レス) id: 115534a937 (このIDを非表示/違反報告)
小夜 - とても面白かったです！頑張ってください (2017年5月12日 23時) (レス) id: 1ce20541ad (このIDを非表示/違反報告)
そら色ぱんだ(プロフ) - maoさん» それはよかったです！ありがとうございました！ (2017年4月30日 12時) (レス) id: 115534a937 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そら色ぱんだ | 作成日時：2017年2月19日 3時
