小さな愛のお話【APH短編】

米:君色のキャンパス　6 ページ16

「かっこいい名前ですね」
すこし考えて素直にそう伝えると、男の口角がどんどん釣り上がっていく。嬉しいのだろうとすぐ理解できた。
　「だろう、そうだろう！？」
　「はい、なんか、響き？がいいよね」
　「アルフレッド・F・ジョーンズ！それが俺さ！」
アルフレットというのは多分下の名前の方だろう。それで、ジョーンズが苗字か。ミドルネームはさすがに呼べない。
「へぇ、じゃあ、ジョーンズさんって呼ぶね」
「あー！なんか冷たいぞ、アルフレッドがいいんだぞ！」
　ジョーンズはいかにもがっかりしたようにがくんと肩を落とすが、まあそうだろうな。
私も会ったばかりの友達に苗字にさん付けで呼ばれたら、私とあんまり仲良くなりたくないのかな……と考えるし。ジョーンズが嫌がるのも分かる。
　「ごめんなさい、じゃあアルフレッドにするよ」
それを聞いてすぐさま落とした肩を上げたアルフレッドは、腕を上から降りかざし、なんだどうしたと思えば私の顔の前にはグッっと立った親指があった。
　「ああ、そうしてくれるとGoodだぞ！」
開いた口から覗く真っ白な歯が、葉っぱの隙間から入る光を反射してキラリと光った。
この歯が空に浮かぶ雲だったら、下から見上げる飛行機は虫歯かななんて、おかしなことを考えた。
　「アルフレッドは、絵になる人だねぇ」
世の中の画家が放っとかないよ、と素直な気持ちにちょっとのお世辞を混ぜて言うと、言われた本人は不思議そうに首をかしげる。
　「どうして君は、そんなこと思うんだい？」
　「きらきらしてるんだよ、アルフレッドって」
　「えぇ？！あ、ありがとう。そんなこと言われたの、はじめてなんだぞ……。」
　そうなのか。なんだか意外な反応に、じゃあ、わたしがもっと言ってあげようと不思議なことを思って、その日はそのままお別れした。


　彼は次の日も、その次の日も、なぜか同じ場所にいた。
　モデルにちょうどいいからその場を動かないでと伝えてわたしは丘を下ると、なぜか彼もついてきた。
　アンタがそこにいないと絵が完成しないでしょ、と叱り口調で言うと、しぶしぶ丘を登る彼はなぜか不機嫌だった。それが少しだけかわいいと感じるわたしもわけがわからないけど。
　この三日間で、彼とすごく仲良くなれた。敬語混じりだった会話からはもう気品なんて感じることはなく、大きく口を開けて笑いあうことのできる仲になった。
　そして、絵のほうもだいぶ完成に近付いていた。まぁ、そこそこの出来栄えだけどね。

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