九話 ページ10
『石上くん……昨日は……ありがとね…弟ちゃんと妹ちゃんの世話…助かった……』
｢いえ、そんな……｣
『弟ちゃんと妹ちゃん……すっかり、石上くんの事大好きになっちゃって……
本当のお兄ちゃんみたいに思ってるみたい……』
｢ははは、嬉しいですね。先輩はもう大丈夫なんですか？昨日すげぇぼーっとしてましたけど……｣
『うん……この通り……ピンピンしてるよ……』
ぴょんぴょんと権三郎を動かしてみせる。
｢ピンピン……してますかね？｣
ガチャっと扉を開けると、遅れてきたのにも関わらず誰もいない。
好きなだけイチャイチャできるぞ、ふへへぇ……
『石上くん……紅茶、何がいい……？』
｢なんでもいいです。A先輩のおまかせで。｣
パソコンを開いて作業を始める石上くん。
今日は何も言ってこないのかな……ちょっと寂しい気持ちもあったり。なかったり。
『お菓子……クッキーとケーキ……どっち…？』
石上くんの隣に座って、クッキーとケーキを机に置く。
くいっと石上くんの袖をひいて、返事を催促する。
｢どちらでも。まぁ、僕が一番食べたいのは……｣
石上くんは私の顎をひいて、私と石上くんの距離は一気に縮まる。
｢A先輩ですけどね。｣
あっ
キザ〜……
でも、かっこいい……
『……石上くん。お気持ちは、嬉しい……けど、ここ生徒会室……神聖なる場所……』
このまま食べられたい。石上くんに私を美味しくいただいて欲しい。
｢……それもそうですね。今日はやめときます。会長達に見つかるとヤバいんで。｣
はぁ、と残念そうに大きなため息をつく石上くん。
好きだなぁ。
わかりやすい所も、案外本当に知られたくない所は固く鍵をかけて誰にも見せない所も。
その鍵を少しずつ、一通りずつ試してゆっくりと開けるのがたまらなく楽しくて、好きだ。
いつかその扉を開けて、私に全部見せてくれないかな。なんて、思ってみたり。
『……でも、私のお家とか……なら考えない事も…？あったり、なかったり…？』
｢！いいんすか？なら今日にでも行きますけど。｣
『あったりなかったりだから……石上くんのえっち。やらしー子。』
｢はいはい、えっちですよ。でもそれはA先輩が…だから……｣
『私がなんだって…？』
｢いえ、なんでも。さて、生徒総会の配布資料今日中に終わらせちゃいますよ。
きちんと確認してくださいね、A議長。｣
『どんとこーい。』
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作者名：白米 | 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/13ec41960d1/
作成日時：2021年3月10日 23時
