六話 ページ7
｢────────あぁ、雨……｣
石上くんが手を外へ突き出して言う。上を向いてるから髪の毛が下へ向かって、耳が見えている。
あぁやばいその耳をはむってしたい。食べたい。
｢急ですね、私置き傘ありましたっけ……｣
｢天気予報では曇りの筈だったんですけどね。｣
｢まぁ、天気予報も絶対という訳ではないからな。時には外れる事もあるだろう。｣
『私、今日傘持ってきてないや……権三郎が濡れちゃうよ……』
｢先輩、帰れないんですか？｣
『うん…まぁ……だから学校で雨が上がるまで待ってようと思って……
四宮ちゃんはこれから習い事あるみたいだし、藤原ちゃんもタクシーだから……
送って貰うのは悪いし……』
｢こんなに土砂降りなのに、晴れますかねー。良かったら僕の傘、入ります？｣
『……いいの？』
絶対嫌がりそうなのに……
｢勿論。家近いですし、ちょっと回り道するだけなんで大丈夫ですよ。｣
『……嬉しい、じゃあありがたく……』
石上くんの胸に権三郎と共に飛び込む。
あっ、この香りはフレッシュシトラスの柔軟剤かな……同じやつ使おう……(変態)
｢はは、そんな飛び込まなくても傘は逃げませんて。｣
へっ。
と四宮ちゃんと会長にドヤ顔をしてから石上くんの方へ向き直る。
(腹立つ〜)
と会長達は思ってるだろうけど、気にしない気にしない。
『石上くん……こっちに傘傾けなくていいんだよ？もうちょっと、こっちに寄って……』
石上くんの肩が濡れている。可哀想に、私の所為だ……
｢いいですよ、別に。こういうのは男が女性を庇うものですから。
A先輩は大人しく僕に守られててください。｣
『……ありがと……』
やっぱり、キザだなぁ。いつもこんな事言ってる。でもそんな所が可愛くてかっこいいんだけど。
｢先輩、何か言いました？｣
『ううん。何も言ってないよ。私の家に向けて、引き続きれっつごー。』
｢はいはい。｣
雨よ、上がるな。
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作者名：白米 | 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/13ec41960d1/
作成日時：2021年3月10日 23時
