四十三話 ページ44
｢先輩、今から部活ですか？｣
『うん……一応、部長としては……顔出さないと、面目つかないから……』
｢頑張ってくださいね｣
『頑張る……』
いつものように、部活へ行く先輩を笑顔で送りだす。
先輩が僕以外の所へ行くのは、少しモヤッとするけど。
穢い気持ちに蓋をして、僕は手を振った。
｢石上くん、貴方……綺麗な恋をしてるのね｣
｢はい？？？｣
なんか知らんけど褒められた。
｢何を言ってるんですか？僕が？綺麗な？恋？はははっ、笑えない冗談ですね｣
｢自分以外の男が居る所へ笑顔で送り出すなんて、生半可な信頼では出来ない事です。
さぞかし自分が好かれている自信がおありなのでしょうね｣
これは……哄笑されてるのか？
僕が先輩に好かれてるなんて、有り得ないけど。
｢あのですね四宮先輩。僕が嫉妬をしてないなんて、いつ言いました？
綺麗な恋？はっ、嘲笑わせないでください。僕が日頃、A先輩に対しての穢れた欲をどれ程抑えてるとお思いで？
僕はA先輩を傷つけないように大切に大切に、硝子細工を扱うよりも丁寧に接してるんです。
一度理性が切れたら、そりゃもう止められませんよ？恐怖でいっぱいになったA先輩の顔……想像しただけでゾクゾクしてきますね｣
いつもふわふわしてて、余裕に溢れたA先輩を力でねじ伏せて服従させる……あぁ、どんなに素敵な表情をしてくれるかな？
｢前言撤回、貴方相当ヤバイわ｣
｢光栄です｣
｢下手すると綾小路さんを押し倒したり無理矢理キスとかしかねないわ、あぁ怖い怖い｣
ぎくっ。
あれは、ほんの少し……ほんの少しだけ、僕の欲が垣間見えてしまっただけだ。
あー、途中で寝て良かったかもしれない。
あのまま起きていれば、無理矢理襲っていたかも。
｢綾小路さんに石上くんの様子がおかしかったら離れろと言っておきますね｣
｢ちょっと、やめてくださいよ……｣
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作者名：白米 | 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/13ec41960d1/
作成日時：2021年3月10日 23時
