三十七話 ページ38
｢A先輩、紅茶はいかがです？｣
『うん、貰う……ありがと……』
相変わらず石上くんの淹れる紅茶は美味しい。
ふと、石上くんが何も飲んでない事に気づき……
『石上くん、紅茶……飲まないの…？』
｢僕は良いですよ。紅茶の代わりに、
A先輩を楽しむので｣
『……え？』
理解が追いつかず、頭の中が真っ白になるも……
光の無い瞳をした石上くんが近づいてくる。
私をソファーに座らせたまま、石上くんは背もたれに手をつき私の首元に顔をうずめた。
『っぐ、あぁ……！？』
首元…石上くんの顔がある辺りが焼けるように痛い。
石上くんを引きはがそうとしても、この状態じゃ寝技も投げ技も出来ないし何より石上くんの力には勝てない。
多分、石上くんはそこまで計算してた。
『う、ぅ……！！いしがみく、やめ……！！！』
身体から何かが吸われていく。
私を抑え込む石上くんの手は、愛おしそうに私の身体を撫でる。
『なにか…わるいこと、したなら……あやまるから……やめ、て……！』
こんな事で収まるとは思えないが、最後の希望を持って私は言った。
勿論収まる筈も無く、その後十分程私は石上くんに弄ばれ続けた。
｢っは……ごめんなさい、我慢出来なくて。痛かったですか？すみません｣
優しく私の頭を撫でる石上くんの口元には、拭ったようだけど微かに血がついていた。
あぁ、私は今さっきまで……石上くんに血を吸われてたのか。
｢すっごい甘かったです…舌触りも滑らかで、多分世界で一番美味しいと思います……｣
なんか私の血は美味しかったみたいだ。
朧気になる意識の中、私はそんな事を考え、少し安心した。
｢えっ、A先輩！？大丈夫ですか！？貧血…？ちょっと飲みすぎたか……？｣
意識が落ちる瞬間には、石上くんの焦った声が聞こえた。
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｢んぱい、先輩！A先輩！皆帰る準備してますよ｣
あれ、石上くん……
四宮ちゃんも藤原ちゃんも、会長も居る…
さっきまで、石上くんひとりしか居なかった筈じゃ……
｢凄いうなされてましたよ、大丈夫ですか？｣
『うなされてた……？』
…じゃあ、今のは全て、ゆ…夢……
『ふぇえ……』
｢どうしたんです、夢小説の主人公みたいな声出して｣
『や、やめ…近づかないで……』
思い出してキュンキュンしちゃう……
｢避けられてる！？｣
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作者名：白米 | 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/13ec41960d1/
作成日時：2021年3月10日 23時
