二十九話 ページ30
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司会者が立食パーティーの終わりを告げると同時に、来賓達がぞろぞろ大きな部屋を出る。
A先輩は最後まで残っていなければいけないという事で、僕らも残る事にした。
『はい…ありがとうございます……このあとも、楽しんでいってくださいね……』
｢ん、もう俺らで最後かな？｣
『うん、多分……車、用意させてる…こっち、来て……』
どうやら来賓は綾小路家が用意した車に乗って新たなパーティー会場へと移動するらしい。
VIP枠という事もあって、A先輩の家の力は計り知れない。
多分今回も規格外な車を用意して来るんだろうけど……
『これ…私の、お気に入り…車種……』
｢車って言うかリムジンですね……うちも同じのを使っています、あまり揺れなくて良いですよね、この車種｣
四宮先輩は乗り慣れているから知っているらしい。
僕は小さい頃、父が主催するパーティーで乗ったっきりだけど…こんなに広かったっけ？
｢しゃ、車内が広すぎて落ち着かんな……｣
ソワソワとした様子で会長が出された珈琲を飲む。
｢あはは、私もですよ〜。小さい頃、私や萌葉のお披露目パーティーで乗ったっきりですからね〜｣
｢皆さんに同意です。僕もお披露目パーティーで乗ったのが最後なので｣
｢上流階級は産まれるとお披露目パーティーが開催されるんだな……｣
｢面倒臭いだけですけどね。僕当時5歳ですよ？なのに長ったらしい挨拶や英語のスピーチを教え込まれて……
あの時は本当に家出しようかと思いました｣
｢あ、それは四宮家だけじゃないんですね。私も沢山覚えさせられて、小さいながらに脳が破裂すると思いました…｣
まぁ結局10年と少し経った今でも家出はして無い訳だけど。
｢しかし、皆妙に慣れているな？俺なんか吐きそうな位緊張してるのに……
一回や二回、乗っただけで本当に慣れるのか？｣
｢あ、それはうちの教育の所為ですね！政治家たるもの、いつも感情を表に出していては務まりませんので……｣
｢僕に至っては本当に慣れっすね。順応力をフルに使って慣れました｣
『皆〜、ジュースと紅茶、珈琲……いっぱいあるよ、どれが良い……？』
｢あ、俺は引き続き珈琲で｣
｢私りんごジュース〜！｣
｢僕は…なんでも。A先輩のオススメで｣
｢私はレモンティーでも頂きましょうか｣
『了解〜……』
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作者名：白米 | 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/13ec41960d1/
作成日時：2021年3月10日 23時
