二話 ページ3
────────初めは、普通の後輩だった。
｢先輩、起きてます？｣
｢せーんぱい、はざっす。｣
｢どうしたんですか？そんなぽかんと口開けてたらケーキかなんか入れますよ？｣
どう考えても少女漫画から出てきたんじゃないかって位の甘い台詞。
最初は計算でやってるんだろうと思ってたけど、よくよく見ればそれは天然らしかった。
でも、一緒に過ごしてるうちに彼が私のどタイプどストライクだと気づいた。
｢先輩って、綺麗ですよね。｣
そう言われた時、一瞬倒れるかと思った。
えっ？何このイケメン。顔がいいんだけど。声もいいんだけど。えっ何。殺す気？
最初はただの冗談だと思って、軽くあしらい続けていた。でも、それは日を増す事に増えていって。
あれっ？もしかして、この子私を落とそうとしてる？
そう考えた事も何度かあった。
けれどそれは誤算で、決して彼は私の事を好きなんかじゃなかったのだと思う。
だって。
『石上くん……好きなタイプ、教えて……』
｢んー……強いて言うなら……可愛らしい人ですかね。あっいや顔とかじゃなくて……
こう、母性本能くすぐられる感じの。｣
って言ってたからだ。だって私可愛らしくないし……(自覚なし)
それでも私は彼の事が気になった。
事ある毎に愛を囁いてくる石上くんにびっくりすると同時に胸がときめいた。
会長に窘められた後も、バレないようにこっそりと微笑まれたり。
その度に私は石上くんに惚れていて、つい眼を奪われてしまう。
すらっとした細身の体に小さい顔。
アイドル顔負けの白い肌に綺麗な鼻筋。薄い唇は、ついつい触れたくなってしまう。
長いまつ毛に綺麗な二重幅。ちょっとダークなジト目。
さらさらつやつやの細くていい匂いのする髪。
あまりにも素敵すぎて、どこでリンス買ってるのか訊いてしまいそうになった。
嫌われてるのが勿体なすぎる。皆にこの子のかっこよさを知って欲しい。
でも石上くんは私だけの可愛い後輩でいて欲しい。そんなわがままな欲求ばかりが募る。
だから、
『石上くん……一緒に、帰ろ……』
もう少し、君の優しさに甘えていたい。
私が触れたら消えちゃいそうな位に美しくて儚い君の横顔を、いつまでも眺めている為に。
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作者名：白米 | 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/13ec41960d1/
作成日時：2021年3月10日 23時
