☆お月見な私たち ページ12
｢お月見？生徒会で！？生徒会ってそんな事ばかりしてるの｣
私は通話画面に向かって毒を吐いた。
｢ああ、会長の提案でな。だから今日は予備校行けないわ、すまん｣
｢……まあ私も今日は空見たい気分だったし(？)、良いわ｣
｢あ、甲斐さんも空見るんだったらあとでこうやって通話繋いで二人で見る？｣
｢あっ、それ良い！急いで家に帰るわ、帰ったら連絡する！｣
｢うん、じゃあまたあとで｣
石上と通話しながら二人っきり(厳密には違う)でお月見だなんて……素敵……
時には都会の喧騒から抜け出して夜空を眺めるのもアリよね、うんアリよ！
一緒にイチャイチャしながらついで程度に月を見るのも嫌って訳じゃ無いけれど、通話をしながら同じ月を眺めるなんてそんなロマンティックな事憧れない訳が無い！
家に帰ってお月見団子を準備し、部屋の窓から月を見る。
今日は一段とよく見える、手を伸ばせば届きそうな位だ。
｢もしもし、石上。今日はよく見えるわね、凄く大きい｣
｢うん、会長曰く星空指数めっちゃ良いらしい。十五夜でこの数値出ちゃったら見る以外選択肢無いって｣
星空指数とか聞いた事無いけど、石上が楽しそうならそれで良いか。
｢私と石上は今違う場所に居るのに、同じ月を眺めてるって考えたら……なんか、隣に居るみたいに感じるわ。不思議で、ちょっとロマンティックね｣
｢……うん。月、綺麗だな｣
｢石上と見てるからね｣
ひとつ月見団子を頬張る。うん、美味しい。
｢う……今日は風強いな。夏服だと少し肌寒い｣
｢奇遇ね、私もよ。帰ってすぐ通話繋いだから、私制服のままなのよ。あーあ、こういう時にどこでもドアとか瞬間移動能力があったら石上の所へブランケットを届けられるのにね｣
｢そんな夢物語を語られても｣
好きだな……私は再認識した。
石上が見えないからこそ、聴覚が鋭敏になる。だから、時々聞こえる石上の吐息や、癖になりそうな低くて甘い声。
石上も私と同じような事考えてたら嬉しいのにな、なんて夢想する。
────────ああ、なんだろうこれ。
こうやって石上と他愛ない話をしてると、凄く安心して、眠くなる……
そういえば最近、夜中遅くまで勉強して……あんまり、寝てなかったかも。
ちょっとだけ、寝ようかな。
十五分位なら、寝ても大丈夫でしょう……
机に突っ伏し、私の意識は暗中へ堕ちた。
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作者名：白米 | 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/13ec41960d1/
作成日時：2022年5月24日 21時
