【SLAM DUNK】カフネ前編 (ページ27)

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25.山王戦前夜② ページ27

初めて聞くAの泣き声は

どこか小さい子供みたいで

Aが悲しくて泣くと俺は胸が痛むことを知った

できるだけ泣かせないでやりたい

そう思った

『電話くださったんですね。』
『携帯見てなくて…気付かなくて、すみません。』

Aが頭を下げる。

「別にいいけどよ。」

Aの頭を上げさせようと、両手でAの肩を軽く掴む。

初めて触れるAの肩は見かけよりもっと華奢で

小さく震えていて

たまらない気持ちになって、そのまま抱きしめてしまったんだ。

『み、三井さん…。』

三井さん

その大きな手を背中と頭に当てられると

まだ見せてないはずの弱虫が浮き彫りになるの

　

　

「ち、ちがう。深い意味じゃねーよ。」

だが、俺から離したAは泣いてた。
　

「そんなに嫌だったかよ…。」

本当は不安だったの

選手としてきちんとやれるか

チームのためにちゃんとできるか

『違くて…。』
『なんだか明日の試合が不安で…。笑えなくて…。』
『私…会いたいな、って思ってました。』

Aが小さく小さく見えて、心がクラクラした。

「そ。そうかよ。」

Aの頭を撫でてやる。

Aが安心したように

いつもみたくクスクス

笑ってくれて安心した。

やっぱ笑ってる方がいいな。

Aが笑うと

俺もさっきまでの山王戦への焦燥感が嘘のように引いた。

　

『…ありがとうございます。』

「バーカ。泣くなよ。」

「でもよ、初めて弱いところ見せたな。」

やばいな。

優越感。

ニヤニヤしちまう。

「で、なんでトボトボ歩いてるんだよ？危ねえだろ？」

『危なくはないですよ？』
『うちの宿泊先、そんなに距離ないですから。』

あの一緒に行った海も、何人もAを二度見してただろ。

危機感が全くないAに少し怒りを覚えるが、冷静になる。

「送る。帰れ。行くぞ。」

『私が送りますよ。』

本気か？
それじゃ、どっちが女か分からないだろ？

「女の子だろ？」
「あと、俺の泊まってる宿、すぐそこ。」

本当にすぐそこだから、指を指す。
Aの顔を見たら、ビックリ、と顔に書いてあって。

少しピリピリしていた俺も

そのAの様子に和らいで

やっと笑うことができたんだ。