君にみえるもの [８]

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床に痕跡などが無いか懐中電灯で照らしながら
注意深く調べていると
ミコトが思い出したように口を開いた｡


ミ｢ここで発見された橘芹菜さんはスニーカーを履いていた｡
でも夕希子さんの靴は見つかっていない...｣


その言葉に2人してミコトに目を向けると
ミコトもこちらを向いて､説明を始めた｡



ミ｢2つのご遺体の共通点を探していたら
違いが気になって...

夕希子さんが事件当時履いていたのは
編上げのエンジニアブーツ｡
トートバッグも持っていて､そのどちらも未だに見つかっていない｡

できるだけ証拠を残さないために
持ち帰ったんだと思ってました｡

...でも橘芹菜さんは靴を履いたままだった｡｣



中｢つまりどういうことだ｡｣


ミコトが提示した1つの可能性...
それは“殺害場所の違い”だった｡


貴｢橘さんは 外で殺されたから靴を履いていたけど
夕希ちゃんは室内で殺されたから靴を履いて居なかった?｣


しかも､編上げブーツを
他人が脱がせるのは簡単ではない｡
つまり、自分から靴を脱いで上がり込むほど
親しい間柄の人間の可能性もありうる｡


ミ｢犯人は...女性かもしれません｡｣


躊躇いながらも気を使ってそういうミコトに
彼は頭の中で考えを働かせていた｡


中｢室内か...考えた事も無かった｡

夢で見るのはスクラップ置き場近くの寂れた通りだ｡｣



彼はあの日から､何度も何度も 同じ夢を見るのに
犯人の顔が見える直前で意識は現実に引き戻される｡

彼は静かな部屋で1人､涙を流し続けているのだ｡

そんな彼に私が出来るのは
夕希ちゃんがよく作ってくれた
檸檬のハーブティーを入れて、
抱き締めてあげることだけ｡

その時思う｡


“夢ならば どれほど良かったでしょう”


彼の涙を流す姿さえ
全て夢ならいいのに...そう願ったところで
何かが変わるわけではないとUDIで学んだ｡



中｢やっぱりあれしかないか...｣


そう言って立ち上がり彼が向かったのは
入口付近にある棚の下｡


中｢死んでる...｣


そこに懐中電灯を当ててみると
ある1範囲に5匹の蟻の死骸があった｡

その蟻はUDIに持ち帰り 調べることになった｡

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