イナズマイレブン――影のヒロイン―― (ページ9)

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第四話：前半ページ9

妹の調子と熱意がもどってきてくれて嬉しい。
　それとはべつに、一郎太には悩みがある。
　サッカーを通じて兄妹のわだかまりがとけたことで、急激(きゅうげき)に二人の距離がちぢまったことだ。
　家族とはいえ、異性。
　一郎太とは異(こと)なるぬくもりがしょっちゅう、ピッタリとくっついてくる。

「おい、お前はもう子供じゃないんだから……」

　そうやんわりと注意しても、通じない。

「あはは……。べつにいいじゃん。これくらい」
「円堂……には、やるなよ」
「なんでー？」
「やるなったら、やるな」
「はいはい……」

　昔は、あたりまえのスキンシップではずかしいと思ったことはなかった。
　変わってしまったのはAではなく、自分かもしれない。
　一郎太は無防備(むぼうび)な妹に対して、そんな答えをみいだしていた。

　※

　ある日の教室、放課後――。
　Aは秋に話しかけられた。

「Aちゃん。サッカー部のマネージャーになる、って決めてくれた？」
「うん。もちろん！かけもちになってしまうけど……、それでもいいなら」
「よかったー！うん。いいよ。これでサッカー部がにぎやかになるなら！一緒にがんばろうね！」

　二人は「やったー！」と子供のようにはしゃぐ。

「じゃあ、Aちゃん。行こっか！」
「うん！」

　行き先は言うまでもない。

　※

　Aがマネージャー入(い)りしたことに、一番よろこんでいたのは円堂だった。

「おっしゃー!! となると……。せっかくだから、今週の土曜日、みんなでどっか遊びに行かないか？」
「どっかって……どこでやんすか？」
「それはー……考えてない！」

　堂々(どうどう)した円堂に、みんなはズッコケた。
　あんまりな円堂に、秋が助け舟(ぶね)をだす。

「そうねー、みんなでシューズを買いに行くのはどう？」

　名案に部員たちは「おお」とざわめく。

「そりゃいいぜ。そろそろ新しいシューズが欲しかったんだ」

　染岡は賛成(さんせい)と身を乗りだした。ほかの部員も同じ意見らしい。

「よし、決まったな！」
「でも、俺……どのシューズがいいか、分かんないッスー！」

　大きな体であわてる壁山の肩(かた)に、円堂がぽんと手を置く。

「安心しろ。壁山。シューズは、Aが一番くわしいからよ！絶対、お前にピッタリなのを選んでくれるぜ！」
「……え、私？」

　Aに白羽(しらは)の矢がたった。