イナズマイレブン――影のヒロイン―― (ページ19)

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第九話：前半ページ19

学校の廊下(ろうか)を歩いてる途中――。
　Aは春奈に呼び止められた。

「Aさん、ちょっといいですか？もしも、もしもの話なんですけど……。たとえば、一郎太さんのお友達が入院したら、お見舞(みま)いに行きますか？」
「えっ……急に、どうして兄さんが？でもまあ、その人が兄さんと仲がよかったら、兄さんと一緒に行くよ」

　すぐに思いうかんだ候補(こうほ)は円堂、サッカー部員たちだ。
　Aがそう言うと、春奈の顔がくもる。

「じゃあ、もし……そのとき一郎太さんとケンカしていたら、どうします？」
「ケンカ……!?うーん、行かない……と思ったけど、私はお見舞(みま)いに行って、兄さんの友達と――兄さんの話がしたいな」

　泣きそうな顔をした春奈とは違って、Aはニヤリと笑う。

「兄さんとケンカして、私は悲しんでます。って兄さんの友達にアピールしたら、兄さんの方からあやまって来そうじゃない？」
「それ(﹅﹅)ですよ！ Aさん！」

　とつぜん、元気になった春奈がAの両腕(りょううで)をつかみ、ブンブンと上下にふる。

「そうと決めたら、私。お見舞(みま)いに行って来ます！」
「ええ!?どういうこと？待って！今の話は本気じゃないから！待って！春奈ちゃん！春奈ちゃんってお兄さんがいたの!?」

　Aにとっては、冗談(じょうだん)のつもりであった。
　じっさいに、そんなことをするはずがない。

　心配になったAは、春奈を追いかけて説得(せっとく)する。
　なぜか、Aは春奈と共に、帝国学園サッカー部のお見舞(みま)いに行くことになった。

『お兄ちゃん、私、お兄ちゃんの友達にお見舞(みま)いに行きたいの！病院教えてね！じゃあ、部活があるからきるね！』
「ま、待て……春奈！なんだったんだ……。とりあえず、春奈が病院に入(はい)れるように手配(てはい)しておくか。ん？」
『お兄ちゃん。友達と一緒に行くから！』

　そそっかしい春奈に鬼道は、フッと笑う。

「ずいぶん、声が明るくなったようだな。あいつらのおかげか？春奈の友達にも感謝しないとな。あの春奈に友達か……」

　鬼道の涙腺(るいせん)がゆるみそうになる。

「まだ、俺にはやるべきことがある。かんちがいしてはいけないな……。待っていてくれ、春奈。佐久間。源田。みんな……」

　彼らを想って天井(てんじょう)を見上げた。