第七話：前半 ページ15
「ふぅ。ついに、帝国と試合か……」
「兄さん
「なんだ、お前もか」
駅で帝国学園行きの電車を待っている間、風丸兄妹が話し始める。
「兄さんなら、絶対勝てるよ！」
「ああ。ここまでやってきたんだ。勝つのは俺たちだ」
盛り上がっている二人の会話に、円堂がまざってくる。
「二人とも、やる気はバッチリだな！ 俺たちなら勝てるって、俺も信じてるぜ！ 絶対、勝とうな一郎太」
「もちろんだ。円堂」
「Aも応援してくれよな！」
「もちろん！」
三人の目は自然に、駅の時計に吸いこまれた。
「お！ そろそろ、電車が来るな。よーし！ お前ら、ちゃんと並べよ！ ほかの人に
「円堂、お前の大きい声も
「そうかそうか！ わりぃ！」
反省しているとは思えない大声に、まわりは苦笑いだ。
帝国との決戦は
※
電車に乗っている間、当然ヒマになる。
一郎太はふと気になったことを、Aに聞いてみることにした。
「A。その……あのときはどうして、あんなにこわがってたんだ？ たしかに、そのときは俺も
「それは……。兄さんも
「そうか。心配かけたな。この通り俺は元気だから、安心しろよ」
Aの表情はけわしいままだ。
「うん。でも、今日の試合も……なにかあるかもしれない。気をつけて」
Aの一言で、一郎太はハッとした顔になる。
帝国学園はすべての黒幕――影山の
ありえないことではない。
「そうだな。
一郎太は、円堂と豪炎寺がいる席へと歩いていった。
「今の話……本当のことッスか？」
後ろの席にいた、壁山をこわがらせてしまったようだ。
背もたれから
「まだ、分からないの」
「そうでやんす。壁山、落ちつくでやんすよ」
電車の中から見える、息がつまりそうな
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作者名：ヤナギカエル | 作成日時：2021年2月21日 20時
