第六話：後半 ページ14
「で、お前らいつまで手、にぎってるつもりだ？」
みんなが思っていたことを代わりに聞いた円堂。
兄妹のおどろいた声が重なる。
「なんだ、忘れてたのかよ。俺はてっきり……」
「私は見ないふりをしていたのに……。空気が読めないのね。円堂くん」
ツンとすました少女――夏未の冷たい声に円堂は意味が分からないと首をかしげる。
ため息をはくと夏未は部室をでていった。
「よし、校長室に行くぞ。A……」
Aの青ざめた顔が円堂の目にとまる。
「全員で行く必要はないはずだ。俺たちが行くから、お前らはもう帰っていいぞ。今日は色々あったからな」
「悪いな円堂……」
「ごめんね、円堂くん。兄さん」
「あやまる必要なんてないさ！ じゃあな、みんな！ 気をつけて帰れよ！」
部員たちは
帰り道の途中、一郎太が立ち止まる。
「兄さん？」
「ほら」
Aの目の前に一郎太の手が――。
「今日はこわかっただろ。家まで、俺が手をにぎっていてやるよ」
「……兄さん！ ありがとう！」
よろこびのあまり、Aは一郎太にだきついた。
「うわっ！ びっくりするだろ！」
「ごめーん。兄さん、つい……」
「はぁ……」
やっと見ることができた妹の笑顔で、一郎太は言葉をなくす。
「本当にありがとう。兄さん」
「……しょうがないな」
手をつないだまま、家につくと、
※
「兄さん、本当に大丈夫……？」
「ああ。これぐらい、どうってことないさ……ッ！」
伝説の「イナズマイレブン」の一人――響木監督にしごかれて、一郎太のひざは赤くなっていた。
Aはマネージャーとして、部室ですり傷の
「いよいよ……。帝国にリベンジできるんだからな。強くなるためなら、軽いケガなんて気にしちゃいられない」
「兄さん。かっこよくなったね。……えっと、前もかっこよかったけど、前よりも、もっと。って意味で……」
「そ、そうか……。なんかはずかしいな……」
二人の顔はすっかり赤くなって、たがいに目をそらした。
しかし、目をそらした先にあるのは部員たちのなんとも言えない目。
部員のほとんどが「ケッ」と気分を悪くしていることを隠そうともしない。
二人はただただ気まずかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ヤナギカエル | 作成日時：2021年2月21日 20時
