第五話：前半 ページ11
妹に隠しごとをされて以来、一郎太はAをよく観察するようになった。
幼なじみと妹に仲間はずれにされていたことがショックだったからだ。
いつもならば、部活終わりに二人で仲良く帰っていたが「今日は用事がある」とウソをついて、Aの後をこっそり追う。
一郎太は今、
※
一人で帰るAに円堂が近づく。
予想通り、二人は一緒に下校することにしたようだ。
ぎりり……と顔をしかめながらも、
「なあ、A。お前のアニキが陸上部に入った理由って知ってるか？」
「走るのが好きだから……じゃない？」
「それもあってるとは思うけどよ、やっぱり俺は違うと思うなぁ」
円堂はなぜか、得意げだ。
本当の答えをごまかしたAが続きを聞きたがると、待ってましたといわんばかりに話し始める。
「俺、思うんだ。あいつは、中学でサッカーができないお前に
「えっ……？」
おどろくA。
もちろん、一郎太はいい気分ではない。
「円堂……！ あいつはなにを勝手に――」
見守り続けることに限界がきていた。
「なーんてな！ 兄妹ならあいつのことはお前が一番くわしいんだろ？ 理由が分かったら、俺にも教えてくれよな！」
「……う、うん」
正直、兄のプライベートなことはあまり知らないままだ。
おたがいにそうだった。
どこかよそよそしく……。
Aの前世が
「円堂……」
円堂の言葉がきっかけで、風丸兄妹はよりおたがいの存在を意識していくことになったのだった。
※
円堂も口だけではなかった。
Aがいつかプレイヤーとして、サッカー部に入ってくれるように。
彼女がどんなにサッカーが好きか部員たちに熱く語る。
あと一歩。
そう思っているであろう円堂――。
そのようすに染岡と豪炎寺はなつかしさを感じていた。
「次はAかよ……。ああなったらあいつはしつこいぞ、豪炎寺」
「はは……。それは俺が一番分かってるさ」
円堂の夢は必ず実現する――。
二人はそれを
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作者名：ヤナギカエル | 作成日時：2021年2月21日 20時
