変えてしまえば。 ページ13
Kiside
色んなことを考えて歩くうち、家の前まで来てしまった。
だんだんと離れていく藤ヶ谷の背中を、必死に追いかけた。
心の距離、なんて考えたら辛くて仕方なかったから。
意地でも縮めてやろうって思って。
まあ、心の距離は離れたままだけど。
頑張って頑張って頑張って、藤ヶ谷に走れば追いつく距離にはなったけど…
結局ここまで来てしまった。
藤ヶ谷が鍵を探している。
もう、今しか…
俺はがむしゃらに走った。
こんなに短い距離なのに遠くて。
思い切り藤ヶ谷に抱きついた。
もう、もう嫌われてもいい。
藤ヶ谷に気持ちを伝えられれば。
もう気づいてしまったから。
落ち着く香り。
動かない藤ヶ谷。
そのままあの日のように、藤ヶ谷も俺も何も言えないように…
ただ温もりはあの日より増していて、愛しさが溢れ出す。
好きだ。藤ヶ谷のことが。
藤ヶ谷が俺の腕を解く。
「北山…こんなこと…いいの。彼女、いるんじゃないの。」
今までに聞いたことのない声だった。
「ああ…」
俺は全てを話した。
藤ヶ谷の頬を一筋の涙が伝う。
「なんで…なんで言ってくれなかったの。別に、別に良いのに。俺は北山が俺のせいで辛い思いをするのも、俺のせいで利用されるのも、俺のせいで苦しませるのもすごく嫌だけど、北山が離れて行っちゃうことが一番怖いんだよ。自分勝手かもしれないけど…離れたくないんだよ。」
「藤ヶ谷…」
「北山がいなきゃ毎日楽しくない。ケーキより、ワンちゃんより、星空より、北山が好きなんだ。」
その一言が僕を救ってくれた。
変えてしまえばいい。
友達から愛しい人へ。
そして恋人へ。
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作者名：北山ちぇりとま | 作成日時：2017年9月19日 1時
