9.恋は交錯 ページ1
長いようで短かった夏休みが終わった。
二学期になると、学校は約一ヶ月後に行われる文化祭の準備で賑わっていた。
「有岡ー！北館から木材取ってきてくんねえ？」
「また俺ぇ？自分で取ってこいよ」
「今、手離せないんだって！お願い！」
「ったく。分かったよ」
俺らのクラスは無難にお化け屋敷をやることになり、俺は用途が分からない大道具の塗装をやっていたのだが、人使いの荒い友人に何かと雑用を任された。どうやら俺は作業が雑だから、いてもいなくても同じ、寧ろいないほうが助かるらしい。
ぞんざいに扱われるのは癪だが、多少作業がいい加減なのは事実なので強く抗議はしなかった。
ついでの必要な買い足しも頼まれてノートの切れ端にメモし、教室を出て窓から外を眺めながら廊下を歩いていると中庭の見知った人影に気づく。
「あいつ…またサボってるし…」
いのちゃんは文化祭の準備には殆ど参加していなかった。当日も行かないつもりだから準備もしなくてもいいと本人は思っているみたいだけど、当然クラスメイトの反感を買うわけで。それがいのちゃんだけに批判が集まるのならいいものの、何故か唯一仲が良い俺が、お前が何とかしろと責められるから放っておくわけにもいかなくなってしまった。
「おい、起きろって」
校舎にもたれて寝息を立てているいのちゃんを起こそうと近づいて声をかけるも、起きる様子はない。
叩き起こしてやろうかとも思ったが、半開きの口のあどけない寝顔を見てやめた。
木材、ちょっとくらい遅くなってもいいよな…。
いのちゃんの横にそっと座る。あっ、ここ日も当たらなくていい感じに気持ちいい。校舎を通り抜ける風を感じながら、眠るいのちゃんを観察する。柔らかそうな頬っぺたが赤ちゃんみたいだな。
ちょっとだけ、と思って指でつんつん突いていると、「んっ…」と唸ったので慌てて引っ込めた。
ほどなくして、いのちゃんは目を覚ました。
「あれ、大ちゃん…？」
「ごめん。起こしちゃった？」
目をこすりながら大きく口を開けて欠伸をした。
「またこんなとこでサボって。板ばさみになる俺の気持ちも考えてよ」
「えー。だって俺が参加したところで役に立たねえよ。非力だし」
「参加してないよりマシだろ。ほら、今から木材を取りに行くからいのちゃんも手伝って！」
「めんど…」
「いいから立って！行くよ！」
渋るいのちゃんを無理矢理動かして、途中投げかけられた愚痴は全て無視。
こうでもしないと本当に何もしないんだから！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 636人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いちご(プロフ) - シリーズすべて読ませていただきました！楽しかったり、苦しかったり、切なかったり…とても面白いです！1番大好きなありいのの作品です！とても続きが気になるので、また書いてくださると嬉しいです。心よりお待ちしてます！！ (2019年5月29日 10時) (
レス) id: 46fdb26abc (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - いつか更新して下さることを心待ちにしております！とっても気になります…！頑張って下さい！ (2017年7月2日 23時) (レス) id: 232a914972 (このIDを非表示/違反報告)
苺米(プロフ) - はじめまして！この作品大好きです！！！いつかまた続きをかいてくださることを楽しみに待っております。 (2017年5月14日 19時) (レス) id: 226b1e3a5a (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - 初めまして！今更ながらシリーズ全て読ませていただきました！設定、ストーリー大好きです。笑えるところもあってだけど切なくて淡い…感動して泣きそうになってしまいました！しばらく更新されてないようですが、気長に楽しみに待ってます！ (2017年2月13日 12時) (レス) id: 056be967bd (このIDを非表示/違反報告)
まよ(プロフ) - コメント失礼します。更新待っておりました！これからもどうぞ作者様のペースで...楽しみにしております！ (2016年11月1日 23時) (レス) id: cde03f2c07 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：迫田ゆめの | 作成日時：2016年11月1日 15時
