我妻くんが求婚してくれない【我妻善逸】

参拾参 ページ34

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｢…蝶屋敷の人ですよね？治療してほしくて…｣





任務帰りだろうか、酷く疲れきった様子で私にそう言ってきた男の人。





よく見ると右足を引きずっており、すぐにその部分を痛めてしまったのだと分かった。





｢大丈夫ですか…？肩貸しますよ。｣





｢あぁ…申し訳ないです。｣





私よりもかなり背の高い男の人の腕を肩に回しながら、今しがた己が蝶屋敷側の人間であることを思い出した。





治療はできないけれど、肩を貸すぐらいだったら私でもできる。





とりあえず治療室まで早く連れて行かなければと思い、歩き出そうとした瞬間だった。





｢椎名さん、そこ代わって。｣


｢えっ？｣





突然後ろからそう声をかけられたかと思うと、我妻くんは私と怪我をした隊士の間に割り込んできて、私の代わりに我妻くんが怪我をした隊士に肩を貸してくれた。





｢…椎名さんじゃ重いでしょ？俺が運ぶからいいよ。｣





｢え、我妻くん…？｣





こちらを振り返ることもなくそう告げた我妻くんは、怪我をした隊士さんの歩みに合わせてゆっくりと治療室へと向かって行った。





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｢………。｣





ポツン、と一人その場に残された私は、二人が歩いていった方をぼーっと見つめていた。





『…椎名さんじゃ重いでしょ？』





その言葉はなんだか我妻くんらしくなくて、どこか落ち着かなかった。





…だって、だって、そんな台詞って…





｢……お、女の子扱いされたみたい…、｣





ぷしゅーっと今にも湯気がでそうなほど熱を帯びた頬を両手で覆う。





そのままその場にしゃがみこみ、私はしばらくの間そこから動けないでいた。






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