我妻くんが求婚してくれない【我妻善逸】

弐拾漆 ページ28

.





タッタッタッタッ_________





早く我妻くんに見せたいという強い気持ちが、私の足取りを驚くほどに軽くさせた。





花瓶を持っているにも関わらず、駆け足で我妻くんを探し回る。





｢走ると危ないぞ〜！｣





途中ですれ違った竈門くんの忠告も聞かず、ひたすら屋敷内を走り回って我妻くんを探した。





早く我妻くんに見せたい、頑張ったのって伝えたい、あわよくば綺麗に飾れたねって褒めてもらいたい。





そんなことばかり考えながら走り回っていた次の瞬間だった________





｢_______あっ！Aさ…｣



｢ッ！！｣





突然曲がり角からきよちゃんが出てきたので、急いで止まろうとしたが時すでに遅し。





____ドンッ！！





｢きゃあ！｣





鈍い音を立ててきよちゃんにぶつかってしまい、その反動で花瓶は手から滑り落ち、パリーンッ！と大きな音を立てて割れてしまった。





それと同時に花瓶の中に入っていた水と花たちが廊下中に散らばるが、それらを片付けているどころではなかった。





｢き、きよちゃん！ごめんなさい…っ、大丈夫…？！｣





私はすぐさまきよちゃんに駆け寄った。





結構な勢いでぶつかってしまったため、小さな体のきよちゃんは簡単に弾き飛ばされて、床に体を強く打ち付けてしまったようだ。





｢は、はい…、私は大丈夫です、Aさんこそ大丈夫ですか…？｣





強く打ち付けた体が痛んで仕方ないだろうに、自身の体よりもぶつかってきた相手を気遣うきよちゃん。





なんて心優しい子なんだろう…。





罪悪感で居た堪れなくなった私は、問答無用できよちゃんを横抱きに持ち上げて、すぐさま治療室へと急いだ。






.

弐拾捌→←弐拾陸

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す