我妻くんが求婚してくれない【我妻善逸】

拾漆 ページ18

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｢はい、じっとしててくださいね〜。｣





薬品の独特な香りが鼻を刺激する。





｢…いっ、｣





ピトッと頬の傷に消毒液のついた綿紗を当てられ、あまりの痛みに思わず目を細めた。





｢…結構深く傷が入ってますね。沁みると思いますが、我慢してください。｣



｢は、はぃ…っ、｣





隊服のスカートをギュッと固く握り締めながら、治療が終わるのをただじっと待っていた。





｢傷が残らないといいんですけど…。｣





そう呟きながら優しい手つきで治療をしてくれる彼女は、蟲柱の胡蝶しのぶさん。





柱でありながら、こうして私のような一般隊士の治療も行ってくれている。





｢…すみません、頬をかすったぐらいなのに…。｣





痛みに慣れてきたところで、しっかりとしのぶさんの目を見て謝っておいた。





｢他の治療中の隊士に比べたら、こんな傷怪我にも入らないぐらいなのに…｣





こんな傷自分一人でも手当て出来るくらいなのに、まさか柱であるしのぶさん直々に治療をしてもらうなんて…。





あまりの罪悪感に目を伏せていると、クスクスと小さく笑う声が聞こえてきた。





｢Aさん、これは立派な怪我ですよ。どんな傷であれ、責任を持って手当てをするのが私たちの仕事なんですから。｣





そう言うしのぶさんの声は優しくて暖かくて、私の罪悪感を無くすには充分な言葉だった。





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