# ズルいよ . Rside ページ38
「んんっ、ふ……ぁ…ぅ」
流れ雲が先輩の顔の端に映っている。
けれどそんな思考すらも焦がしてしまおうと口内を襲う先輩の表情に駄目だと目を閉じた。
「せんぱ、もう……止め、て……」
掠れていた声にしっとりと濡れたような感情が含まれた言葉に、泣きたくて、泣きたくなくて頭が痛い。
かれこれ数分は経っているその熱い絡め合うキス。
それは今までのどのキスより強引で最悪で嫌なはずなのに気持ち良くて、凄く優しくて…。
自分の中の何もかもがぐちゃぐちゃになりそうで、苦しい息継ぎの合間にもう止めてくれと溢れた涙と共に何度も懇願した。
「ん、ふ……はぁっ。」
「っ、ゲホッ、はぁっはぁっ!」
やっと離された時には体に力は入らず、顔は涙と互いの唾液でベタベタになっている。
何でこんなことするんだなんて聞くつもりはない。
そんなもの聞かなくたってもう分かってるから。
伊野尾先輩が居ないと俺はもう充分に満足出来なくなってるなんてこと。言わせるだけ自分の首を絞めるだけだから。
だからそれが嫌で泣いてしまうんだ。
離れたい心と離れられない体。
その事実を今のキスで改めて思い知らされて、先程の拒絶する気持ちが薄らいでいるから、涙が止まらないんだ。
「ほんと……っ、ズルいよ、せんぱい…」
まだ溢れる涙を流しながら弱々しい声で訴える。
それを見た先輩は少しだけ苦そうな顔をして確かにと呟いた。
「俺の、何がいいの…?」
「え?」
「俺、正直、最低な奴じゃん。
守ってくれてる先輩に酷いことばっか言って…、玩具だペットだって散々理由付けてるくせに他の男には自分から誘って抱かれてんだよ?」
「……。」
「あの日先輩怒らせて無茶苦茶に抱かれたのも自業自得。それなのに体の心配して、挙句の果てに御守り?どんだけお人好しなの。」
先輩へ思いを告発してから、随分と横暴で酷いことをしていたものだと自分を嘲笑う。これじゃあ、先輩のこと言えないってのに。
けれどそこまでしてきて、離れると言った俺を引き留めようとする先輩に余計分からなくなる。
普通なら喜んでもいいくらいなのに。
けれど、先輩は一つため息をついた後、呆れたような顔でこちらを見つめた。
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悠(プロフ) - この作品、定期的に読み返してしまいます。何故か読みたくなってしまいます。続き書かれていないかな、なんて思って読み返してます。私がいのやまにハマった作品がこちらの先輩の愛し方からだったので本当に好きな作品です。他の作品の更新頑張ってください。 (2017年11月25日 17時) (レス) id: 322cf86261 (このIDを非表示/違反報告)
あやりょ 。(プロフ) - いちごさんコメントありがとうございます!この作品にも関わらず他のも、しかも何度もお読みいただいているなんて本当に光栄です!これからも期待に応えてよりいいものを届けられるようにしますので応援の程宜しくお願いします! (2017年8月31日 1時) (レス) id: b331d663ec (このIDを非表示/違反報告)
あやりょ 。(プロフ) - Cさん» Cさんコメントありがとうございます!何と、他の作品もお読みいただいたなんて嬉しいです!そして私情にも関わらずそうして優しい言葉を送っていただける事に感謝しながら、期待に応えられるように頑張りますので宜しくお願いしますm(*_ _)m (2017年8月31日 1時) (レス) id: b331d663ec (このIDを非表示/違反報告)
あやりょ 。(プロフ) - とまとねこ。さん» とまとねこ。さんコメントありがとうございます!トキメキを少しでも感じていただけて嬉しい限りでございます(^ ^)完結まで本当に応援ありがとうございますと共にまた別作品も変わらぬ応援宜しくお願いします♪ (2017年8月31日 1時) (レス) id: b331d663ec (このIDを非表示/違反報告)
あやりょ 。(プロフ) - 涼奈さん» 涼奈さんコメントありがとうございます!最後までそうして温かい応援本当に感謝です!こちらこそ、完結までお付き合い頂きありがとうございました♪ (2017年8月31日 1時) (レス) id: b331d663ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あやりょ 。 | 作者ホームページ:http://antyan
作成日時:2017年2月23日 22時