ヌ レ ル __ 。 [inym]

【１６】好きなニオイ _ Rside ｡ ページ16

「あ、そうだ。

…昨日の服なんだけど、ごめん、まだなんだ。」



まだベランダに干している、乾ききれていない服を伊野尾さんが申し訳なさそうに指を指す。



「ああ…、そんな、大丈夫です……こちらこそすいません…取ってきます。」



そう告げてベランダへ出てれば、伊野尾さんと同じ少し甘い良い匂いが干された洗濯物からふわりと風に乗られて鼻をかすめた。



「…いい匂い…」



女の子みたいな甘ったるくない、ほんのり柔らかな甘さにとっても優しいこの匂い。

俺、結構好きだ。落ち着くし。



「ん？山ちゃん？」


「へっ？！う、わぁ！」



ボーッとしていたからか、伊野尾さんが真後ろから顔を覗き込んできて、思わず外して手に持っていた洗濯バサミを弾き飛ばす。

それに驚いた顔で笑う伊野尾さんに言葉が出ないまま、何故か俺の心拍はグングン上昇した。



「ぃや、ちょっと、、驚いて…」


「ああ、ごめんね？
ほら、まだ雨上がったばっかで寒いから、早く部屋に戻ろうよーって呼びに来たの。」


「あ……すいませっ…、？！」


「ほらぁ、ちょっと冷えてる。」



〜〜っ。
ち、ちち、近い…っ！


がっちりホールドされた為に、濡れた服から感じ取れた微かな柔軟剤の匂いは後ろの伊野尾さんによってそれは強いものへと変わる。

少し甘い、柔らかな、優しい…匂い。


俺…落ち着くって思ったの…撤回だぁ…


こんな近くでこの匂いを感じた途端、落ち着くどころか心臓が驚く程早くなってるのが恥ずかしいくらいに分かった。



「……いや、やっぱダメだ。ちゃんと乾かさなきゃ風邪引いちゃうもんね。」


「ぁ、ぁのっ、ちょっ…」



ホールドされたまま後ろから呟くものだから、耳元へダイレクトに伝わってそこ中心に熱さが広まっていく。



いや…いやいや、

ちょっと待って…




なんで俺


顔熱くなってんの…？

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