あなたには私がいる (ページ34)

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翔サイドページ34

できると思った。

コーヒーを淹れるだけなんだから。

そんなの誰にだってできることなんだから。

みんなを待たせちゃいけないと思って、

気が急いていたのかもしれない。

僕の手にあたったカップが落ちる。

カシャーーーーーーーンッ

ただカップが落ちただけ。

Aちゃんは優しいから、謝れば絶対に許してくれるはず。

頭ではわかってるのに、喉が締め付けられたように息ができなくなる。

カップが落ちた音を聞きつけたのであろうみんなの足音が聞こえる。

心配してくれているんだろうと頭では分かっているはずなのに、怖くて怖くてたまらなかった。

智「翔くん、大丈夫？」

キッチンをのぞきこんだ大野さんのことさえ怖く思えて、息ができないのと怖いのとで震えがとまらなかった。

しゃがみこんで震える僕を見た大野さんが慌ててAちゃんを呼ぶ声が遠くで聞こえる。

パタパタと足音が近づいてくると、体がふわっと温かいもので包まれて、僕は意識を手放した。