君と俺との赤い日々。

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100戦100敗なんかじゃない、100戦1勝99敗なんだ。

その1勝は、意外な所で訪れた。

厨房に急ぎ足で駆け込んで、ハル兄が厨房から出て行った後もそのままドアにヘナヘナと座り込んでいた。

自分でもビックリした。

他人、しかも初来店のお客さんの前で一瞬だけだがあんなに自然に笑えたなんて。

今まで料理を褒められたことも笑顔で話しかけられた事も何回もあった。

その中で一度も愛想笑いすらできなくてお客さんを怒らせることも度々あった。

何故だろうか、彼の笑顔は安心できたのは。

「赤が嫌いな少女が久しぶりに他人に向かって笑えた。その他人が、まさかの赤を仕事にするカープ選手」

世にもへんてこな話だが事実は小説より奇なりとはこういうことを言うのだろう。すべて事実だ。

今、私の顔はきっと真っ赤だ。

だって顔が高熱が出たかのように熱い。

その熱さで、私の凍ったような心も溶かしてくれないかと思うのはただの戯言か。

赤が嫌いな私の顔を真っ赤にするなんて。

彼は狙っていたのだろうか？

否、そんな訳ない。「あの日」の事について知っているのは私とハル兄だけなんだから。

ー料理褒めてくれたの本当に嬉しかったな。

うわべだけでなく本当に美味しそうに、嬉しそうに笑ってくれた彼の笑顔が何故か忘れられなくて。

カープ選手さん、改め田中さんにまた来てほしいなんて願うのは、贅沢なのだろうか。

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