君と俺との赤い日々。

#7 ページ8

晴也side

厨房に駆け込んでくるや否や、ドアのところにへなへなと座り込んだ彼女。

手で顔を覆いながらうずくまっている。

体調が悪くなったのかと思い「おい、Aどうした？」と声をかけてみたら

あ「あのね！」

そこには普段の2倍くらいの大きな声で、正に朱を注ぐをいう言葉がピッタリなくらいに顔を真っ赤にしながら話すAの姿が。

あ「あの人､､､田中さんが私の料理を誉めてくれたの」

「久しぶりにハル兄以外の前で自然に笑えたんだ」

そう付け加えて笑う彼女は、本当に本当に嬉しくて仕方がないようで。

ー驚いた。

俺でもこんなに彼女を喜ばせるのはそうそう簡単な事ではない。

そもそも彼女は「あの日」から人を信じるのが怖くなってしまったようで、俺の前くらいでしか笑わなくなってしまった。

常連さんですらにも笑えないのに、初来店のお客さんに笑うなんてまずなかった。

愛想笑いですら無理だろうけど思っていた彼女がまさか自然に笑える日が来るなんて。

それを初来店でやってのけた田中さんは、一体どんな魔法を使ったんだ？

俺のぐるぐる回り始めた思考は

あ「あ、ごめんハル兄。田中さんの会計いってもらっていい？」

心臓のドキドキがおさまりそうにないの、たぶんレジの前でまってるだろうから。という彼女の言葉により打ち切られた。

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