度し難い彼に愛されたい！【蓮巳敬人】 (ページ5)

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はすみんと夏祭り。ページ5

時期は夏本番の8月の初め。
今日は夏の醍醐味でもあるお祭りの日。
彼氏のはすみんと屋台飯を楽しむ…つもりだった。

『…はすみん。』
「何だ、A。腹が空いたのか？チョコバナナならあるぞ。」

そうTシャツの襟を摘んでパタパタするはすみんを横に沢山の浴衣を着た人が行き交う所をじっと見つめていた。

『私もお祭り楽しみたいの！！何で屋台の店番なんてしないといけないの！？
しかも寺の息子なのにチョコバナナ！！』
「仕方ないだろう。俺の寺で行われる祭りなんだ。
俺にとっては毎年恒例だ。去年は綿あめだったがな。」
『うぅぅ…。毎年恒例なんて知らなかったんだもん…。はすみんとお祭りデートしたかったぁぁ！！』

はすみんは寺の息子。
だから屋台の店番を頼まれているらしい。

そんな事も知らずに浴衣まで着てきたのに！！

『はすみんは何とも思わないの！？』
「…まぁ俺もチョコバナナはどうかと思うがな。」
『そっちじゃないわ眼鏡！！
じゃなくて、私とお祭りデート出来ないことに関して聞いてるの！！』
「確かに残念とは思うがな。仕方の無いことだろう。
何ならお前だけ行ってきても良いんだぞ」

お前だけ！？乙女心のおの字も知らないのか度し難眼鏡！！

『もういい！！はすみんなんか一生チョコバナナ作ってろ！！そしてチョコバナナになってしまえ！！』

「チョコバナナ2つだな。待っていてくれ今作るからな。」

『って聞いてないし！！』

私の事なんて放ったらかしでバナナにチョコをディップしていくはすみん。
貴様もディップしてやろうか。

『良いですよいいですよ。私なんて忘れ去られた存在ですから！！』
「待たせたな。チョコバナナ2つ、確かに渡したぞ。ありがとうな。」

柔らかい笑顔で子供にチョコバナナを手渡すはすみんを横目で睨む。
そんな私に気付き溜息を零した。

「…A。」

『知りません』

「…すまないとは思っている。無理を言って断った方が良かったと後悔もしている…。
そこでもう少しで鬼龍と神崎が手伝いに来るんだ。
今更何だと言われるかも知れんが二人で回らないか？」

そう申し訳なさそうに真っ直ぐに私を見つめて言うはすみん。
その言葉1つで私の心の突っ張りは溶けて無くなった。

『…いいの？』
「あぁ。勿論だ。お前が嫌じゃなければ。」
『…嫌な訳無い。』

ただただ嬉しかった。
諦めていたお祭りデートが出来るのだ。
それ程嬉しい事は無い。

今日の事は今年の夏1番の思い出にしよう。