『初恋の誓い』【八乙女楽】「第二部」 (ページ31)

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何となく横に向けた視線に写ったエレベーターで、本来の目的を思い出す。

　

すっかり十さんと話し込んで忘れてしまっていたが、撮影の時間が迫っている事に気付くと目の前の彼に向き直った。

「良かったらラビチャ交換しませんか？」

少し不安もあったが、即答で了承してくれたので安心した。

十さんとは今まで話す機会がなかったので気付かなかったが、話していてとても馬が合う。

年齢は私の方が下だが、同い年だったら仲の良い友人になれていたかもしれない。

前より距離も縮んだ気がするし、此処は言ってみるべきだろう。

「あの、私の事は下の名前で呼んでくれませんか？私も龍さんと呼ぶので！」

「え！」

「…やっぱり駄目ですよね。」

驚愕の表情を浮かべる十さんの反応に落ち込んでしまうが、それを見て慌てて否定する。

「あ、そういう意味じゃなくて、その…女の子を下の名前で呼ぶって、馴れてなくて…。恥ずかしいな…って」

顔を赤く染めて照れ臭そうに頬を掻く十さんが可愛くて、私まで顔が赤くなってしまった。

「…龍さん。」

ボソッと呟くように言えば、外していた目線を私に向ける。

そんな彼にとびっきりの笑顔を向ける私は、とても嬉しいんだと思う。

芸能界に入ってからこんなに気軽に話せる人は初めてだから。

「龍さん！私とお友達になって下さい！」