『初恋の誓い』【八乙女楽】「第一部」 (ページ5)

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NO.3 ページ5

「…八乙女楽。お前こそ誰だ」

ちょこんと少年の前に立ち小首を傾げる少女を見て、少し驚いた顔をした八乙女楽と名乗る少年は、Aとは真逆で年齢より少し大人びて見える。

睨むようにAを見る楽には全く気付かず、元気良く声を掛けるA。

「私は青空Aだよ！楽、一緒に遊ぼ！」

急かすように楽のYシャツの裾を引っ張るAに「呼び捨てかよ…」と不満を漏らしながらもされるがままになる楽は、Aの笑顔に当てられたのか、先程より表情が柔らかくなっていた。

本人は気付いていないようだけど。

つい前まで疲れて寝ようとしていた筈なのに、そんな事はなかったように走り回るAは、元気すぎるくらいだ。

目の前に咲くシロツメクサの花を見て足を止めたAに、怪訝そうに眉を潜めた楽だったが、突然頭にきた重りに驚き目を見開いた。

「へへ。私が作ったクローバーの冠だよ！」

楽の頭に人差し指を向け、無邪気に笑うAは更に言葉を付け足す。

「それね、私の友達にだけあげるものなんだよ！だから楽は私の友達第1号！」

例えるなら花が咲いたように、美しく咲き誇る桜のような、そんな笑顔を見せるAに一瞬で心を奪われてしまった楽は、何も言えず黙り込んでしまう。

それを不思議に思ったAだったが、次に見せた楽の初めての笑顔に目を輝かせた。

「…変な奴だな」

その瞳は最初に会った時のそれとは違う。

愛しいものを見詰めるような、とても優しい瞳。

そんな彼にAも元気良く笑い掛けた。