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歯を食いしばって激痛に耐えながら必死に撤退の手段を探す。
だが、正直この危機を脱する方法はまるで浮かばない。
「さあ、せいぜい私を愉しませてくれ」
「鬼舞辻、無惨……!」
くそ!その叫びは心の中で木霊した。
──ザーと雨が激しさを増す。
地面を濡らし、髪を濡らし、服を濡らし、体を濡らし、まるで水の中に沈んでいるような感覚。
夜の雨雲は月の光を遮り、あたりを暗闇と化していた──
.
ボキ、と骨が折れる音がする。
やや間があって再びその音がする。
それが断続的に続く中、時折ザシュッと肉を斬られる音がして、少なくない血が地面へと滴る。すぐに雨と混じって水溜まりが淡い赤色に染まる。
苦悶の声は一切聞こえない。
目や耳を塞ぎたくなる光景でも、癸七子の声は上がらない。
そんな彼女はふと、あれから何分経ったのだろうかという疑問が脳裏の片隅に浮かんだ。
与えられる痛みによって時間の感覚はとうに狂い、今や痛覚も麻痺してほとんどなにも感じない。意識は朦朧、まるで廃人にでもなったような気分だと心の中で呟く。
と、そこでまた骨を折られた。肘関節だ。
(これで98本目、か)
98本というのは、折られた骨の数だ。治癒の呪符で治したらまた1から数え直しているので合計何本折られたかは300を越えてから数えていない。
(そろそろ治癒の呪符で回復しないと……。でも、もう呪力が……)
──そこで、唐突に鬼舞辻が話を始めた。
「お前は目が良いようだな」
「……」
「ならば──
「……っ!」
ぬっ、と鬼舞辻の手が瞳へと近づいてくる。
「……ひッ、げほっ、げほっ」
癸七子は反射的に上擦った声を上げて、ぎゅっと体を強張らせた。久方ぶりの発声で、喉にピリッとした感覚が生じる。
が、それ以上に心臓が冷えるような恐怖が体を支配していた。
(そんな……それだと治癒の適応外──)
逃げなきゃ、抵抗しなきゃ。
このままじゃ永遠に目を失ってしまう。
そう、思うのに……体は動いてはくれない。
そして。
「……ッッぁ、ぁぁ゙、ッ」
ぐちゅり
ぐぢゅ、ぢゅく、
粘着質な音が雨音に混じって消えていく。
──そして、私は目を失った。
────
物凄くどうでもいい補足
・人間の骨は206本ほどあると言われています。
更新遅くなってて本当に申し訳ないです。
そして中途半端ですが次に行きます!収められなかったよごめんね
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雛月りな(プロフ) - 白黒虎さん» わあああありがとうございます!今日中に更新出来ると思うので楽しみにしててください!応援ありがとうございます!! (2019年11月26日 12時) (レス) id: 6c5cdc2389 (このIDを非表示/違反報告)
白黒虎 - 早く続きが読みたいですが、出来るまで待ちます!!頑張ってください!!! (2019年11月26日 6時) (レス) id: 126a3885c8 (このIDを非表示/違反報告)
雛月りな(プロフ) - むいたん!さん» コそう言って頂けてすごく嬉しいですし、書く原動力になります!コツコツ更新できるように頑張ります。 (2019年11月24日 22時) (レス) id: 6c5cdc2389 (このIDを非表示/違反報告)
むいたん! - 内容が濃くて凄く面白いです!次の更新楽しみにしています!♪ (2019年11月24日 10時) (レス) id: 9146c62b5e (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 続きが楽しみです!頑張ってください! (2019年10月3日 2時) (レス) id: 193d98d6bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛月りな | 作成日時:2019年9月29日 18時