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しかも今は日中活動している鬼も現れる最悪な状況である一方で鬼舞辻の足取りを掴む絶好の機会でもあるのに……
癸七子は焦り始めた。
毎夜毎夜、鱗滝さんの鎹鴉が来ないことに安堵するようになって、来てしまったらどうしようと恐怖に刈られた。だんだんそれが酷くなっていって、疲れが溜まっても寝られなくなっていった。
それが太刀筋にも現れるようになって、必要以上に力を使うようになってしまっていた。
呼吸法で無理矢理焦る感情を捩じ伏せていたら目に見えて精神が摩耗されていって、食欲も失せた。
休憩している暇などないと、ろくに宿もとらず川で水浴びをして、体の限界がくるまで動き続けた。
なんとか鬼から情報を得ようと、もう何十人もの鬼と対峙した。
だけど鬼は何の情報も口にしなかった。
鬼舞辻の名前を出したら骨の髄まで恐怖に染まった色を放って、それでも問い詰めたら失神するものもいた。
まさに八方塞がりの状態だった。
「くそ。くそ、くそ、くそっ!」
一体これだけ疲弊した体のどこから出てるんだろうと癸七子自身でも嗤っちゃうくらいの大声を上げた。
木に八つ当たりすると、木が折れた。
無意識に呼吸を使っていたらしい。
そのことに苛立ちが募って、地団駄を踏んだら、今度は地面に亀裂が入った。
旅立つ前はこんなことは出来なかった。異常なまでも急成長。自分でもこの変わりように驚いている。
でもそれがどうした。
そんなのは出来て当然だと、癸七子は冷たく切り捨てる。
いくら強くなろうが、救えなかったらなんの意味もない。鬼舞辻の情報がないならそんなモノ簡単に無に帰す。
4、5日前、都会にも行ってある人に会ってきた。
炭治郎くんが鬼舞辻と遭遇した場所。
都会なんてもう腐るほど見ていたが、鬼舞辻を「月彦」と呼んでいた女性には接触していなかった。
不穏な動きがあると気取られる可能性が高かったからだ。
だがもうそんなことは言っていられなかった。
後から思えば冷静な判断ではなかったと後悔した。
でも。
それ以上に、「月彦」の名前を出した時の女性の反応が頭から離れない。
『月彦さん……ですか?残念ながら私は存知あげませんが……』
この言葉を聞いた時、もう目の前が真っ暗になった。
月彦を、鬼舞辻を知らない?
そんな馬鹿な。
物語では名前を呼んでいたじゃない。
でも嘘をついている色は見えなかった。
ああ……この人、
この人、本当に知らないんだ。
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雛月りな(プロフ) - 華さん» コメありがとうございます!自分でもこんなに手の込んだ展開が書けるとは思っていませんでした笑。(こっからネタバレかも→)まだ伏線回収がなっていないものがあるので楽しみにしていてくださいね!…皆さんが受け入れてくれる内容かは不安があるんですけど、アハハ (2019年8月17日 10時) (レス) id: e209b0612b (このIDを非表示/違反報告)
雛月りな(プロフ) - noiseーノイズさん» 主人公ちゃん可愛い雰囲気出てましたか!?いつも「口調悪い……もっと可愛くしたい……」と思いながら書いていたので、noise-ノイズさん(名前合ってますか?)のコメント嬉しさ半分と驚き半分で読ませて頂きました!バトル楽しんで頂けて良かったです!! (2019年8月17日 10時) (レス) id: e209b0612b (このIDを非表示/違反報告)
雛月りな(プロフ) - ひにゃたこさん» ありがとうございます!これからも神でいられるように頑張ります笑。嬉しいコメントありがとうございます!! (2019年8月17日 10時) (レス) id: e209b0612b (このIDを非表示/違反報告)
華 - 凄いしか出てきません!!とても面白い展開で、ワクワクしながら見させて頂きました!!大好きです!!これからも頑張って下さい!!応援してます!! (2019年8月17日 3時) (レス) id: 2aa6dd9a8d (このIDを非表示/違反報告)
noiseーノイズ(プロフ) - よ、読みやすいっ.....!主人公ちゃん口調とか可愛い雰囲気を感じるのに物語はすっごいバトルですね!いやぁー読んでて楽しいです!更新頑張ってください! (2019年8月17日 1時) (レス) id: c4f6a2aaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛月りな | 作成日時:2019年8月5日 18時