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この場には癸七子と女の2人と、死闘の惨状だけが残っていた。

ふっ、と嘘みたいに高密度の殺気が消える。

癸七子は自然と安堵に似たため息を吐いていた。

「これで嬢ちゃんの役目は終わッたな。もう眠りな」

「……」

役目。

まるでこちらの事情を知っているような口ぶりだ。

怪訝に眉を(ひそ)めるが、少し思案して、むしろ好都合かと堰を切ったように立ち上がった。

「あ、あの!さっきの鬼を喰った黒い球体……あの時の人ですよね!?

た、大変身勝手なお願いですがどうか鬼舞辻からある家族を救うために今私と一緒に――」

「いいや」

癸七子の言葉を女は強い口調で遮った。

びくりと体が震えて、瞳が揺れる。

「嬢ちゃんの、役目は、これで終わりだ」

言い聞かせるように、有無を言わせない迫力でそう断言する。

ゆっくりとこちらに歩み寄ってきて、「嬢ちゃん」ともう一度呼び、両の肩にそっと、しかし強く掴んできた。

「……」


嫌な予感がした。


その女の人はすごく真剣な表情で。

それは、癸七子の不安をものすごく掻き立てた。

……嫌、聞きたくない。

この嫌な予感から逃げたくて目をそらそうとするが、体が強ばって、その人の視線から目を離すことが出来なかった。



――そして。





「その家族は既に惨殺されている」




頭の中が真っ白になった。

「お前達の事情は義勇っていう奴から聞いている」

――――。

「オレも鬼舞辻を探していてな、たまたまその現場で義勇と出会(でくわ)したんだ」

――――――。

「オレがその現場を見つけたのは今から5時間前。

義勇が到着したのは今から30分前」

――――――――っ

「5時間前にはもうその家族は惨殺されていたンだ」

―――――――――ッッ

「ごめンな、守れなくてよ」

――――――――――――……

そこで、私は意識を手放した。







嗚呼、私の足掻きは一体何だったんだろう。

意識がふわふわするなか、ふとそんなことを思った。

不思議と心に揺らぎがない。それこそ凪のような“無”の状態だ。

(あの人の言葉……それってつまり……)

下弦の鬼と死闘を繰り広げている最中の時間感覚は麻痺していたが、一つだけ分かることがある。

5時間も鬼とは戦っていないということだ。

それでまた分かることがある。

とても残酷な事実だ。

(鬼を見つけたのは、義勇さんと別れた直後……
私がやっと、動き出したとき……)

それから分かることは……

。→←。※(微)



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作品ジャンル:アニメ
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雛月りな(プロフ) - 華さん» コメありがとうございます!自分でもこんなに手の込んだ展開が書けるとは思っていませんでした笑。(こっからネタバレかも→)まだ伏線回収がなっていないものがあるので楽しみにしていてくださいね!…皆さんが受け入れてくれる内容かは不安があるんですけど、アハハ (2019年8月17日 10時) (レス) id: e209b0612b (このIDを非表示/違反報告)
雛月りな(プロフ) - noiseーノイズさん» 主人公ちゃん可愛い雰囲気出てましたか!?いつも「口調悪い……もっと可愛くしたい……」と思いながら書いていたので、noise-ノイズさん(名前合ってますか?)のコメント嬉しさ半分と驚き半分で読ませて頂きました!バトル楽しんで頂けて良かったです!! (2019年8月17日 10時) (レス) id: e209b0612b (このIDを非表示/違反報告)
雛月りな(プロフ) - ひにゃたこさん» ありがとうございます!これからも神でいられるように頑張ります笑。嬉しいコメントありがとうございます!! (2019年8月17日 10時) (レス) id: e209b0612b (このIDを非表示/違反報告)
- 凄いしか出てきません!!とても面白い展開で、ワクワクしながら見させて頂きました!!大好きです!!これからも頑張って下さい!!応援してます!! (2019年8月17日 3時) (レス) id: 2aa6dd9a8d (このIDを非表示/違反報告)
noiseーノイズ(プロフ) - よ、読みやすいっ.....!主人公ちゃん口調とか可愛い雰囲気を感じるのに物語はすっごいバトルですね!いやぁー読んでて楽しいです!更新頑張ってください! (2019年8月17日 1時) (レス) id: c4f6a2aaa5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雛月りな | 作成日時:2019年8月5日 18時

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