想いを聞く者《壱》

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Aside

国木田「おい、太宰！」

太宰「あぁ遅かったね。虎は捕まえたよ」




事が収まったところで国木田さんが気付いて倉庫内に入ってきた

状況を見て少し驚いているようだけどね



国木田「！その小僧……じゃあそいつが」

太宰「うん、虎の能力者だ。変身してる間の記憶がなかったんだね」




敦くんは意識を失ったまま眠っている


記憶がないのは当然だ。体の主導権を「虎」に奪われていたのだから






自身と異能力が別離している者は、大抵が異能に「喰われる」



どんなものも、制御できなければ獰猛な獣と同じ

己に牙を向けてしまう




…なかなか面倒な世の中なことだ





国木田「全く―――次から事前に説明しろ」ピラッ



そう言って国木田さんが取り出したのは
太宰さんが渡したのであろう一枚のメモ


メモには「十五番街の西倉庫に虎が出る。逃げられぬよう周囲を固めろ」と掻かれてある




国木田「おかげで非番の奴らまで駆り出す始末だ。皆に酒でも奢れ」



すると倉庫の入り口から三人の人影が見えた


入ってきたのは武装探偵社の社員である「異能力者」





与謝野「なンだ、怪我人はなしかい？つまんないねェ」

与謝野晶子―――能力名【君死給勿】



江戸川「はっはっは！中々できるようになったじゃないか太宰
まぁ僕には及ばないけどね！」

江戸川乱歩―――能力名？【超推理】



宮沢「でも、そのヒトどうするんです？自覚はなかったわけでしょ？」

宮沢賢治―――能力名【雨ニモマケズ】



国木田「どうする太宰？一応、区の災害指定猛獣だぞ」

国木田独歩―――能力名【独歩吟客】




蝶の髪飾りを着けた女性

探偵服に身を包む青年

麦わら帽子を首にかけた金髪の少年


武装探偵社の社員である彼らは慣れた様子で話を進める




太宰「うふふ」




そんな中、国木田さんに問われた太宰は笑みを浮かべた




太宰「実はもう決めてある」

太宰治―――能力名【人間失格】




私の能力を介して見える色は、聞こえる音は


彼がかつての友人を懐かしみ



その言葉に従って道を進もうとする心情が読み取れる






太宰さんはチラッと敦くんを見ると

………多分、先の敦くんの言葉を思い出してるんだろう







――――こんな奴がどこで野垂れ死んだって――――


――――いや、いっそ喰われて死んだほうが――――






あぁ、そうだよね

太宰さんは、織田さんの言葉、ずっと覚えてるんだから

放っておけないだろうよ

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