想いを聞く者《壱》

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――十五番街・西倉庫


Aside

海沿いの深夜の西倉庫

敦くんと太宰さんが二人でいる中


私は倉庫内の、二人から少し離れた物陰から

「無関心」を使い、気配を消して様子を見てる




夜目は利く方だけど、まぁ暗いからね…

【好奇心】【探究心】の異能力も使う

これらの感情はね、五感を研ぎ澄ます事が出来るんだ


特定の物や音を鮮明に見たりとか、聞いたりとか出来るんだ



…………うん、太宰さん、なんて本読んでるの？

「完全自 殺」なんて本良く見つけたね？

ていうかそんな本良くあったね？？？


敦くんもドン引きしてるじゃない…





中島「……本当にここに現れるんですか？」

太宰「本当だよ」



…あぁ、そうだね

今日は月が綺麗だから

絶対に「虎」は現れるだろうよ




太宰「心配いらない。虎が現れても私の敵じゃないよ

こう見えても「武装探偵社」の一隅だ」




そう、「虎」は太宰さん相手では無力に等しい

太宰さんの異能力は、そういうものだ




サラリと云ってのけた太宰さんに、敦くんは俯いて
「憧れ」「羨望」そして――――「自虐」


それらの感情をあらわにしながら、過去を見るような

言われたことを復唱するような声で、ポツリと語りだした




中島「はは、凄いですね。自信のある人は

僕なんか孤児院でもずっと「駄目な奴」って言われてて――――」




………これはまた、闇が深いなぁ

だいぶ「負の感情」が募ってるね

何かしら負の感情が大きく募っていると、その人は私には、黒い靄がかかって見える


それは感情が大きければ大きいほど、深ければ深いほど、濃く、大きい靄となる

そして、まるでその人を飲み込むみたいに広がる


……私は、異能力を「耳」でも多少使ってるけど…

そういう人からは、なんだか虚しい音が聞こえる

とても軽くて、儚い音




今の私の目には、敦くんはその月光のような白髪すらくすんだように

黒い靄に覆われて見える


私の耳には、疲れきった虫の羽音のような、小さな悲しい音がする




中島「そのうえ今日の寝床も明日の食い扶持も知れない身で」




靄は、敦くんが言葉を口から吐き出す度に広がる

………仕方ない、黒(負の感情)は簡単に白(正の感情)を染めてしまうから



中島「こんな奴がどこで野垂れ死んだって…
いや、いっそ喰われて死んだほうが―――」





……自己評価が低い、というか…

これは、また大変だね



自分を大切に思えないのは、危ういよ

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