2.死んではくれないか ページ3
彼女はもうすぐ死んでいく。
体中にいくつも咲いた小さな花に命を吸い取られ、もう二度と目を覚まさなくなる。
そういう、病だ。
体に小さな花を咲かせた彼女は、いつも柔らかく微笑んでいる。
病のせいで体調が良くない日が多くなってきていても、それは変わらない。
「顔色が良くないねい、大丈夫か?」
「大丈夫、少し...疲れただけ」
甲板の隅で、空の樽に背を預け、蹲るようにAは座っていた。
その隣に腰掛け、色の白い細い腕をとって脈を測る。
異常に遅い脈。
動いているのかいないのか、じっと感覚を研ぎ澄まさないと見逃してしまいそうなか細い脈。
悲しい事に、これがAの”正常”だった。
「目眩や吐き気はあるか?」
「無いわ。本当に、少し疲れただけよ...」
ほら、またこうして笑うのだ。
うっすらと汗をかいて、顔は青白くて、「大丈夫」だなんてわかりやすい嘘をつくのが、こいつの悪いところだ。
「...そうかい。おれも少し、休憩するかねい」
「ふふ、隣どうぞ」
素直に隣に座れば、空の樽からおれの方に重心がズレてくる。
異様に冷たくて異様に軽い綿みたいなその肩を、飛んでいかないように抱いた。
「...なぁ」
「なぁに?」
「...なんでもないよい」
どうかこのまま安らかに、死んではくれないだろうか。
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3.無力な青を愛したかった→←1.それはまるで棺のようだった
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「ぱずる」(プロフ) - 哀羅さん» はい、新作を作ろうと思ってますのでもう少しお待ち下さい! (2020年11月20日 2時) (レス) id: 6f1abe1470 (このIDを非表示/違反報告)
哀羅(プロフ) - 「ぱずる」さん» またなにか新作作られますか?楽しみにしてますね! (2020年11月19日 19時) (レス) id: 4b111e8b4e (このIDを非表示/違反報告)
「ぱずる」(プロフ) - 哀羅さん» そう言っていただけてめっちゃ嬉しいです!!最後までご愛読ありがとうございました!! (2020年11月19日 9時) (レス) id: 6f1abe1470 (このIDを非表示/違反報告)
哀羅(プロフ) - おつかれざまでじだ泣泣泣もう涙腺崩壊中でず泣でもっ!でもっ!主ちゃんとマルコなりの幸せの形が見えました。最高の結末です。 (2020年11月19日 2時) (レス) id: 11aacecd07 (このIDを非表示/違反報告)
哀羅(プロフ) - 「ぱずる」さん» ですよね〜泣最後どうなってまうんやろうなぁ…気になりすぎる!待ってます! (2020年11月15日 16時) (レス) id: 4b111e8b4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:「ぱずる」 | 作成日時:2020年6月24日 3時