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「めちゃくちゃ美味そう」
食卓に並んだ3品のおつまみとメインの唐揚げを見て倫也は嬉しそうに呟いた
『お口に合えば良いですけど』
そう言いながら倫也のグラスにビールをお酌するA
「本当ありがとう、仕事頑張って良かった〜」
『いえいえ、お疲れ様です』
今度は倫也がAのグラスにビールを注いでいく
「じゃあ、いただきます」
『いただきます』
2人はお酒を飲みながら食事を楽しんだ
倫也が地方に行っていた間の土産話を沢山聞かせてくれ、程よくほろ酔いになったところでそういえば、と倫也は紙袋を取り出した
「これお土産ね、食べて」
Aに手渡されたのはご当地のお菓子だった
『え?ありがとうございます!何か私貰ってばっかりで…』
「良いの、ご飯も作ってもらったしね」
『そんな大した事じゃ無いですけど…』
「それにこれも貰ったから、開けても良い?」
倫也は先程Aから送られた紙袋を持ってニコリと笑う
『どうぞ、気にいると良いですけど』
Aは今日の昼間からずっと渡すのを楽しみにしていたはずが、いざその時になってしまえば気に入ってもらえるのか、喜んでもらえるのかという不安の方が大きく自分の好みだけで選んだ事を少し後悔していた
「うわ、めっちゃ可愛いね。俺があげたのと似てる」
『中村さんにはこれが似合うかなって選んでたのがたまたま同じ形のもので…』
ラッピングから出てきたのは黒色のバケットハットで、1箇所に白い糸で小さな刺繍が施されている
「ありがとう、大事に使うね」
『いえ、こちらこそありがとうございます。喜んでもらえて良かった…』
「あ、そうだ。これ晩御飯の材料費ね」
倫也は財布から1万円を取り出してAに差し出した
『いえ、それは良いです!いつもご馳走になってますから』
「そういう訳にいかないよ、作ってもらったし」
『本当に良いですから』
「ダーメ、受け取ってもらえないと次から誘いにくくなっちゃうけど…良いの?」
『…脅しだ』
「あはは、脅しなの?誘われないのは嫌なんだ?」
『…じゃあ半分しましょ!』
そういうとAは財布の中のレシートを取り出してキッチリ半分の額をスマホの電卓アプリで出し、倫也に画面を見せる
『これだけください!1100円です!』
「もう、Aはその辺頑固だね」
そう言いながらも観念した様に倫也は2000円差し出した
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作者名:村民 | 作成日時:2023年2月17日 17時