20話 ページ22
必死に願う鶴丸を一瞥し、深いため息をついた。
乱)「…随分と、都合がいいんだね」
あ)「なっ…」
とっさに文句をいいかけて、鶴丸に止められた。
鶴)「…わかってる。だけど、お願いだ。教えてしくれ…っ」
乱)「ふぅん。だったら、そこにいる女、殺してよ」
鶴)「！？」
乱)「ボク達か、その女か。どっちか選びなよ」
それは。
随分と残酷な話じゃないか。
鶴丸にとって、私はおばあちゃんの孫で。
乱君は元仲間で。
数ヶ月の私と、何年かの彼らなんていったら、当然彼らではないか。
チラッと鶴丸がこっちをみた。
目があった瞬間、そらされる。
…殺していいよ、とか。
言えるぐらい、私はそんないい人じゃない。
できる事と言えば、祈るだけ。
ただ、私を殺さないでと…私を選んで欲しい、と。
鶴)「…無理だ」
乱)「ほーら、どうせボクらの事はどうでもいいんだよ。この女が大事なんだろ？」
今乱君は、意地悪な質問をした。
それをわかってて、聞いてる。
…だからさぁ。
悪ぶりたいなら…君も傷ついてどうするのよ。
あ)「もーさ、その辺にしたら？」
乱)「あんたは黙って」
あ)「やだよ。私は鶴丸の家族だって。…ポジションはどうであれ、私は自分の大切な人が傷つくのを見たくないの。…乱君は違うの？」
乱)「…」
あ)「言ったよね？”いいコちゃん”は嫌いだって」
鶴)「お、おい…」
乱)「ボクのどこがっ…」
あ)「だったら。…傷ついた顔しないで。貫きなさいよ」
今度こそ、本当に黙ってしまった。
乱)「…はぁ。もう、いい」
諦めた顔をして、天井を仰ぐ。
鶴丸はジッと見つめてる。
乱)「…最初にキレたのは、大倶利伽羅だった」
鶴)「くり坊が…！？」
乱)「燭台切が折られたんだ。大倶利伽羅の目の前で」
鶴)「光忠…っ」
どうやら、この二人が特に知り合いらしい。
鶴丸は涙を流してる。
乱)「大倶利伽羅がキレて…それからは、戦いだった。アイツは、ボク達同士を戦わせたんだよっ…！」
仲間同士で戦わせる。
それは、どちらかが折れるまで終わらない。
…前任は、どんな人だったのだろう。
どんな人で、どんな気持ちでいたんだろう。
乱)「ボクはさ、誰と戦わされたと思う？よりによってさ…っいち兄だったんだよ！」
いち兄とは。
誰か知らない。
けど、名前からして兄だったんだろう。
乱)「いち兄はボロボロだった。最後に悲痛な顔してボクを…押した。起きた時にはもう…誰も。ボク一人だった」
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作者名：なーこ | 作成日時：2017年3月6日 17時
