38話 ページ8
あ)「…帰らないで」
俺の手を二つの手が掴む。
その手に惹かれるように、俺はもう一つの手を津野崎の頬に触れた。
ピクリと体が小さく跳ねた。
頬を撫でるようにしながら目元まで動かし、そのまま涙を拭いた。
あ)「ちー…？」
うっすら目を開けて、不安そうな、だけど少し期待したような目をみた。
…残念、何もしませんよ。
至)「…また来るから。話も聞くしさ」
熱をもった頬は、柔らかく。
乱れた髪は色っぽい。
至)「だから…今日は帰るね」
俺は乱れた髪を耳にかけ、2度ほど撫でた。
至)「おやすみ」
津野崎からは小さな寝息が聞こえた。
それを確認し、鍵を持って外に出る。
鍵はポストに入れ、それようの連絡も一緒にした。
そして一人、夜風に当たりながら、考える。
どうして上手くいかないんだろう。
上手くいく人といかない人の差って何？
至)「…もっと大事にしろっての」
胸糞悪い。
いくら仕事が出来ても、顔がよくても。
そんな事してる時点でもうドン引きだ。
でも俺は社会人だし、私情を挟んで仕事なんてしない。
ただ、本当に。
こいつ、最低だな、とひたすら思うだけだ。
西)「…茅ヶ崎さん…？……いや、そんなはずないか」
「あら、知り合いでしたか？」
西)「いえ、どうやら勘違いのようでした」
「そうですか。…それで、いつお父様に報告しましょう」
西)「………もう少し、待っていただけますか？もう少しで仕事に区切りがつくものですから」
「ええ、大丈夫ですよ。…私はいつまでも待ちますから」
碓)「ねぇ、じゃま。どいて」
至)「ひどいなぁ、真澄。もっと優しくして」
碓)「アンタに優しくする意味がわからない。その分監督に注ぐ」
至)「流石監督一筋。…ねぇ、真澄はさぁもし監督が違う人と付き合ったらどうするわけ？」
真澄は嫌そうに俺をみて、ため息をついた。
…酷すぎワロタ。
碓)「監督が俺以外を見るなんてありえない。そいつを殺す」
至)「お前ならマジでやりかねないわ」
碓)「…監督が幸せじゃなさそうなら、すぐに奪う。だから付き合っていても関係ない」
至)「おぉ…いっそ清々しいね」
碓)「監督を傷つける奴は許さない。…アンタもそうでしょ？」
いや、俺はそこまで過激派じゃないし。
ってか俺がもしそんな事したら、これから先気まづいよね。
至)「そんな事したら会社にいられなくなるよね」
至さん、ニートになっちゃう、なんて言うと怪訝な顔された。
碓)「会社？…ニナと会社は関係ない」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 45人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なーこ | 作成日時：2019年1月17日 22時
