天才は演じない

21話 ページ23

”初対面で呼び捨てとか、最悪…”なんて言いながらも、否定はしなかった。
ダサいあだ名って、なんだ。

失礼な。

幸)「で？あんたは？」

あ)「私は、染井Aでーす！よろしく〜」

幸)「バカ女ね。はいはい」

あ)「幸、酷いな〜」
バカ女、か。
中々酷いあだ名じゃん。

幸)「じゃ、イメ画描いてくるから」
そう言って、幸は行ってしまった。
もう1人は、鉄朗さん。

大道具担当なんだとか。

あ)「へ〜、よろしくね〜！鉄朗さん」

綴)「え！？分かるの！？」

あ)「え？うんー。…聞こえなかった？」

綴)「ってか、喋ってたんだ…」

支)「その内慣れますよ！」

監)「支配人も分かるんですか！？」

至)「流石身内…」
…あんまり嬉しくないくくりだけどね。



至)「…あのさ」

あ)「んー？」

至)「俺、劇団やめるわ」

あ)「…何でさー」

至)「皆と温度差違うし。俺、ネトゲ第一だし」

あ)「…何で私に言うのさー」
そんな大事な事。

至)「何となく、一番に言った方がいいかなーって」
多分。
真剣に悩んだ結果なんだろう。

だったら、私もちゃんと答えるべきだろう。

あ)「至」
今までゲームをしていた手をとめ、お互いに向き合う。
至はどこか気まづいのか、目を逸らされた。

あ)「今やめたら、絶対後悔するよ」

至)「…」

あ)「私は、至が舞台に立って演技してるの、最後まで見たい」

至)「…」

あ)「…ま、あくまで私の意見だしね〜。明日、いづみたんに言ってみなよー？」
はい、シリアス雰囲気終わり〜なんて言って、もう一度ゲームに戻る。

至)「…わかった」
もし、私が監督だったら。
やめないでって、説得する。

それは、私の立場でも言えるけど…
重みが違う。

責任の、重みが。
じゃあ、もし団員だったら…？

…ぶっ飛ばしてる、かも。
ゲーム第一なんてふざけんなよ、みたいな。

微妙な立ち位置は時として辛いけど、逆にありがたい時だってあるんだね。
うん、学んだ。



たるたるが、皆に”やめる”と言う話をした

咲)「やめるって、本気ですか！」

至)「一応保留ってことにはなってるけど」
いづみたんが、不安そうな顔をみてる

碓)「やめたければ、やめれば。あのおっさんも言ってたし」

綴)「おい、真澄！」

至)「そうそう。潮時だと思う。もし、やめても、みんなのことは応援してるからさ」
…潮時、ねぇ

あ)「潮時なんて、無いんだけどね」

至)「…」

あ)「そんな時期、決めようと思ったらいつでも出来るけど？」

監)「Aちゃん…」

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